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当たり前ではない「読み書き」。 学習障害の子どもにとって足りない学びの環境と親の苦悩

スコラボを受講している子どもたちの中には、学習障害を抱える子どもたちも少なくありません。
今日は、読み書きについて学習障害(ディスグラフィア)の診断を受けた子のお母様に話を伺いました。

学習障害にどうやって気づいたか

現在、学習障害のある小学3年生のお子様は、学校の宿題や漢字の書き取りに関して先生が赤字や青字で書いたものなぞり、書く回数を少なくしてもらうなど、配慮をしてもらいながら過ごしています。
学校によっては似たような特徴を持つ子どもに対して、iPadなどで撮影してあとで見返せるようにするなどの配慮をしているところもあるそうです。

お子様の学習障害に気がつくきっかけは、小学1年生のときでした。
50音の書き取りテストで合格できず、合格するまでに再テストを5回したお子様。

幼稚園のときはひらがな50音や自分の名前の書き方を教えてもらったり、幼児教室にも通って字を習っていたりしたので「幼稚園からやってきたじゃん!読めてたよね?」とお母様は不思議に思っていました。

練習すれば書けるようになると思っていたし、読めれば書けると思っていたので、お母様は「練習しなよ」という毎日。

お子様はストレスで怒ることが増え、「宿題しなよ」とお母様が言ってもなかなかやらず怒ってしまう、ということの繰り返しだったそうです。

とにかく書くことを嫌がっていて進まないのでお母様が不思議に思っていたころに、学校の二者面談がありました。

そのときに「書き取りの宿題を家で嫌がる」と話をしたところ、担任の先生もちょっと気になっていたようで「よければスクールカウンセラーに授業態度をみてもらってアドバイスを受けることもできますよ」と教えられます。
その後スクールカウンセラーから「おそらく書くことが困難な学習障害があると思います。」と言われました。

お子様のかかりつけの主治医に学習障害の相談をしたところ、大学病院の発達障害や学習障害を専門とする先生を紹介され、そこで色々な検査をすることになりました。
その結果、発達面の問題はなく言語能力に関しても通常の子どもより秀でている一方で、書き取りの能力に問題がある学習障害=限局性学習症(ディスグラフィア)という診断が下されました。

学習障害に対する配慮

学習障害とわかった前後で、お母様とお子様、そして学校はどう変わったのでしょうか。

汚く書いていても注意はしません。「丁寧に書きなよ」と声はかけるけどそれだけです。
と明るく笑うお母様。
わかる前は「ちゃんとマスに入るように書かないとダメだよ」「ここはハネなきゃダメだよ」と言っていましたが「もうそれはできないんだな」と考えることで、お母様の負担やストレスが減りました。

書くことが苦手だとわかれば、書いているだけでえらいし、本人が頑張った成果として左右ぐちゃぐちゃのバランスでもいいな、と前向きにとらえられるようになったといいます。

以前は文字を書くこともきちんとやらないといけない、という固定概念があったけれど、この子にとっては文字をきれいに書けることが重要ではなく、将来タイピングで正しい文字を選択できるようになることの方が重要だとお母様は考えを変えました。

そうやって、学習障害の子の学びについて理解を深めていくと、周囲の人々の学習障害の子に対する理解や学びに必要な環境がかなり不足していることに気づきました。
特に、学校の先生によっては、学習障害に対する理解がまだ足りていないと感じることもあるそうです。
「頑張れば書けるようになる」「きれいに書けるようになると思うので、自分で書けるようにしてみましょうか」と、先生からされる提案も、学習障害の子にとっては的はずれな場合もあります。
でも、先生に「頑張ってみようか」と言われたら、子どもは「頑張ります」と答えざるをえません。
宿題はノートに書くことが大事だ、と思っている先生もいらっしゃり、それは古い考えだと感じていて、先生もいろんな学びの方法があることを知って欲しいと思います、と語るお母様。

もし、学習障害だとわからないままだったら。
もし、あの時の先生がそういった配慮をしてくれない先生だったら。
今も辛い日々を過ごしていたかもしれません。

お母様の話を聞いて、学習障害を持つ子どもの気持ちを、周知の人々や先生が理解してくれることは本当に大事なのだと感じました。


できないことではなく、得意なことに注目する

現在、お子様はゲームにハマっています。
Nintendo SwitchでやるAmong Usやマイクラ(マインクラフト)、スマブラ(スマッシュブラザーズ)といったゲームが大好きで、それがきっかけで攻略本を読むようになり、漢字にも興味が出始めました。

学習障害の子には「意欲を持たせることと、劣等感を持たせないこと」が良いと言われています。
そういう点でゲームの攻略本を読むことで、漢字が読みたいという意欲につながってよかった、ゲームも色々と役に立つ、とお母様は教えてくれました。

スコラボでも最初の受講はスマブラでした。
当時お子様がスマブラにハマっていたので、これなら興味を持つかもと「スマブラの授業あるよ?スマブラの勉強できるんだって!やりたい?」と声をかけたら「やりたい!やるやる!」と乗り気な声が返ってきたといいます。

「これは得意なんだ」と思える好きなことがあったらいいなと思っていたことと、スマブラだったら幅広い年齢層の人がやっていて、いろんな人と対戦もできるしいいかな、と思ったそうです。

実際に受講したところとても楽しかったようで、先生から教わった「得意な武器がこうだから遠隔攻撃が得意!」などいろんな知識を一生懸命お母様に話してくれました。
スコラボ以外にも、タブレット学習をしたけれど結局は書かないといけないためなかなか進まず、iPadで行うプログラミングもやってみたけれどお子様的にはイマイチだったようです。
学習障害に対しての配慮があまりなされていない習い事の継続は、難しいものがあるといいます。
その点、スコラボは単発で受けられて、書くこともほとんどなく、あったとしてもそれを提出するわけでもありません。
宿題があるわけでもないから、本人も気楽に受けられます。
動画や講義型などの見ているだけの授業だとすぐ手遊びなど違うことをしてしまいますが、スコラボは相互での会話が常にあるため、しっかり集中力が保たれます。
得意とする言語能力を駆使して授業に参加していくことも子どもには合っている、とお母様は感じたそうです。

1回目がスマブラ、2回目がAmong Us、そのあとアカデミックな内容(ダイヤモンド博士、地球の中の世界、といったクラス)に飛び込んで行きました。
その時の様子はどうだったのでしょうか。

ダイヤモンドや地球といった題材はお子様がもともと好きでしたが、お母様の方から「気になるから一緒に受けよう!」と誘いました。
1時間の授業があっという間に終わり、その後も授業の話をして「じゃあ、次はこの授業を受けてみよう」と学習意欲が増しました。

地球のことを自分で調べようとしても、スコラボで受けた授業ほど面白くはなりません。そんな、一見面白味を持つことが難しい学問分野でも楽しく学ぶことができることで、その後の学校の授業や何かの本で学んだ話題が出たときに、「あ、これスコラボでやったな」と興味を深めるきっかけになるのは、とてもいいと思います、と複数のスコラボのクラスに参加した感想も教えていただきました。

お母様から教えていただいた「意欲を持たせることと、劣等感を持たせないこと」にスコラボが一役買うことができたようです。

求められる学習障害の子どもへのサポート環境

今後のことに目を向けて、お母様は学習障害の子どもたちに対して、環境や大人たちの対応にどういうことを期待しているのでしょうか。

学習障害に対する配慮がないために十分に勉強ができなくて、本来得られるはずだった知識や成長を得られない場合があります。
ちゃんと配慮されて勉強できていたら、もっと良い学校に行けたかもしれない、そしてそれは人材の損失だしもったいないことです。

「誰しも書くことは普通にできなければならない」というような自分の経験に基づいたことだけが全てじゃない、ということをフラットな目で思えるといいなと思います。
学習障害を持つ子どもが受ける配慮は、障害がない子どもや大人からすると「甘やかし」とみなされる場合もあります。
配慮をされているから「ずるい」ではなく、「そうすることが当たり前」で誰しもが学習しやすいようになってほしいと思っています。
みんなが「字が書けない困難があっても、良いところを伸ばせばいいから大丈夫だよ!大したことないよ!」となったら過ごしやすいかもしれませんね、とお母様からお言葉をいただきました。

学習障害の子どもたちの興味を伸ばし、意欲を持たせ劣等感を持たせないクラスを、スコラボはこれからも作り続けていきます。


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