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“茶会”を催しました。 -実はパーティー好き。-
大崎町のご近所さんには少しずつ準備していることを伝えていたですが、この度大崎町内に新たな合作の拠点としてstudio hz (スタジオヘルツ)をオープンしました。(正確には工事はまだ全て終わっていないのでプレオープンですが)
『合作茶会』と銘打ったオープン記念イベントを開催、これから合作をしていきたい方々をお招きしてレセプションを実施しました。
本当はもっと多くの方をお招きしたかったのですが、会場キャパシティの関係で今連携の話をしている堀口製茶さん・若潮酒造さん、久徳建設さんを中心とした合同忘年会を兼ねる形式にしました。お呼びできなかった方はすみません。また改めて機会を作る予定なので、楽しみに待っていて頂ければと。
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茶会は合作の真髄
あまり公言はしていなかったのですが、自分は“パーティー野郎”だと思っています。いわゆる新宿歌舞伎町や六本木のクラブで踊り明かすパーリーピーポーとは少し違うのですが、“人のつながりを生む場=パーティーやイベント”だと思っているので、そういった意味でパーティーの設計が好きです。
合作役員会の中でも、以前から茶室を作りたいと話していました。
自分の中では、<“合作を体現する場所”としての茶室>のイメージができていて、茶室をテーマにそれを表現したいという構想は何年も前から練っていました。
実現に当たり改めてリサーチを重ねていたのですが、茶室は亭主が一期一会でもてなす場。この機会だけかもしれないからこそちゃんとおもてなしをするという意味合いと、亭主(ホスト)の仲介により茶会に参加した客人同士の新たな出会いが生まれることが大事な要素です。
“新たな合作が生まれる要となるような場” それを体現し伝えていくことをやりたいなと画策したのが茶会です。
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場づくりの本質は、建物の完成ではない
自分は合作を立ち上げる少し前まで、山梨県富士吉田市で財団を運営し、まちづくりに携っていました。
そこでのプロジェクトの1つで、空き飲み屋街の再生事業を手がけました。
20軒ほどがひしめき合う、幅2メーターもないぐらいの細い路地があり、新宿のゴールデン街のような雰囲気だった場所がすべて空き家になってしまっているところを、全て借り上げて再生するプロジェクト。
そこは西裏という地区で、昔は“肩と肩とがぶつかり合うぐらい賑わっていた町”というストーリーが地域では語り継がれていたエリアでした。借り上げた通りは全て空き家になり、ガランとした雰囲気になっていましたが、自分はもう一度「肩と肩とがぶつかり合っている景色」が具体的に思い浮かんだんです。
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studio hzをつくっていることにも通じるのですが、場をつくる上では<全てを作り上げてから「はい使ってください」>というアプローチは難しいなと思っています。
大事なことは建物を完成させることではなく、「その“場”が完成した時はどんな状態なのか?」「そこでどんなことが起こっているのか?」そうした完成したときの賑わいののイメージをを多くの人と共有しながら、そこに向けて一緒に創っていくということだと考えています。
自分は見たい景色を具体的に頭の中で描くタイプです。それを共有することで「作りたかった景色」を伝えることができる一方で、まだないものを言葉だけで共有することは非常に難しい。詳細な説明を求められるのですが、正直伝わらない…だからこそ、早い段階で<場を一緒に共有する>ことを大事にしています。
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この時は、空き家の中の不要な部分の解体だけ実施し空きスペースにした上で、照明だけは配慮してしつらえました。こうして屋台みたいな感じで、地域の人たちに出店してもらったり、イベントブースみたいに使ってもらったり。
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大事なことは「この場は、楽しくなっていく」と感じてもらえるようにすること。
“昔はこの町はこういう賑わいがあって、本当にこんな感じで肩と肩がぶつかり合うところだったんだよ。”と当時を知る人が言える場をこしらえる。 そうすると、町の人たちも「この一旦廃れてしまった飲み屋街が、こんな風に変わっていくんだな」という期待感を持てます。
この時のイベントは、みんながものすごく楽しんでくれました。空き家は全く改装もしておらず、照明だけの状態です。建物は完成していなくても、これで楽しいんですよね。建物が綺麗に仕上がることが目的ではなく、人が集まってワイワイできることが楽しい。
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茶会で思い描いていたこと
合作の茶会に話を戻すと、地域での“合作”を体現し参加者に体感していただくためのしつらえとして、空間、料理、席順、光の演出に時間を掛けて準備をしました。
1つはカウンター。しつらえとして、 人と人との交流が生まれるようなバーカウンターが欲しい。これは、Limei homeの前迫昭平さんにお願いして、「ああでもない、こうでもない」と言いながら作ってもらいました。
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お茶割をついでくださっているのは、若潮酒造の上村曜介さん。
また、メグルカグプロジェクトで地域の小学校から出た机を使い、清水木工さんに天板を作ってもらいました。そこに金属加工で家具を作っているNガレージさんに脚を作ってもらい、象徴的なテーブルとして料理を並べるメインの場として中央に置かせていただきました。料理は、お多福さんに鹿児島の郷土料理を用意いただきました。
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そして以前のnoteでも書いた通り、絶対にお茶割が飲みたいと思い、若潮酒造さんと堀口製茶さんにお茶割りを作って振舞っていただいたという“合作”が生まれました。
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緑茶だけでなく、和紅茶をつかったお茶割もとても美味しかったです。
自分としては、参加頂いた皆さまと「合作として描きたい景色」を少し共有できたかなと思います。
会の後半はカウンターやメインテーブルの周りにみんなが集まり、飲み食いしながらずっと立ち話に花が咲いていました。地域の事業者さんも、合作メンバーも、初めましての人同士も、みんなが楽しそうにワイワイ話をしていました。
地域の人たち同士も意外と繋がっていなかったりするので、 「この人はこんな人で、こんな面白いことをしていてね」と紹介して回る。初めて会った人もそうでない人も含めて、今までとは違った非日常の中でお互いの想いや価値観を共有するような場、今回そういった場ができたのではないかと思います。
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アートも場も、簡単には言葉で表現しきれない
よくアート作品に対峙した時に、作品の解説を求めたり、作品を言語的に理解しようとすることが多いと思います。アートにもちゃんと歴史や研究があるので、美術史的に説明することは可能ですが、自分にとって大事なのはそこではありません。
本当にいい作品とは、相対峙した時になんか心を揺り動かされるものがあります。なぜか分からないけどドキドキしたり、怖い思いをしたり、気持ちいい思いをしたりがあります。それを後で紐解いてみると、こういった背景があったんだと理解する方法もありますが、最初に必要なのは対峙して感じること。腑に落ちることではなく、感じること。
場づくりにおいても、「あの場にいて楽しかった、こういう場を続けたい、起こしていきたい」という気持ちを動かせるかどうかが本質だと思っています。
ありがたいことに、茶会の後には参加者の皆さまからたくさんのメッセージをいただきました。「楽しかった」「こういう場をこれからも作っていきたい」「一緒にまた何かやりましょう」など、そう言ってくださったことが今回の茶会の答えかと思います。
これから
まだまだ内装も外装も整えていきたいところがありますが、少しずつ手を加えながら場としては使い始める予定です。
具体的にはこれからですが、自分は結構お裁縫が好きなので、例えば職人さんをお呼びして教えてもらいながら手を動かしてつくる会や、食×裁縫のイベントなどできないかな、子ども向けのこともやりたいな、とテーマやアイデアが浮かんでいます。
その他、現在大崎町では『あなたとおおさき未来デザイン会議』というプログラムを行っており、来年度は「住民とデザイナーが共創するデザインプログラム」をスタートする予定です。
このあたりの“デザインプログラム”にも長く仕掛けをしているので、詳しくはまた。
ちなみに、studio hzの名前の由来は、「周波数(=波)」と、合作の中国語の読みから名づけました。
合作は二面性を持っています。会社としては創業者の二人がアートと物理という対極的な二面性や、誰もがそうだと思いますが、個人の中でも感情的/論理的な面の2つを内包している。もしくはさまざまな人や物事にはA面B面があったりする。その多様性を内包して新しいものをつくっていくことが合作です。
「周波数」の“波”は、線で描くと山と谷。A面とB面、山と谷、それぞれを持ち合わせながらやっていくという意味でのヘルツ。
あと「合作」は中国語で協力・コラボレーションという意味ですが、読み方は「hézuò」です。頭文字をとるとhz、ヘルツです。
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これから、いろいろ合作しましょう!
special thanks(順不同)
堀口製茶さん、若潮酒造さん、久徳建設さん、前迫昭平さん、清水木工さん、Nガレージさん、お多福さん
リサーチ・グラフィックデザイン:横井 絵里子(合作)