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移住でよく聞く、「一生ここに住むよね?」問題を乗り越える。地域に関わる事業・組織の採用と在り方について。

経営者の立場からすると、どんなかたちでも人が辞めることは正直とても辛い。

地域も会社も人で成り立っているので、変化は当然のこと。合作でも人の入れ替わりが出てきました。
幸いにして、「やってられるか!」といった大喧嘩に発展した別れ(退職)はなく、独立や留学などで合作を卒業していくことが多いのですが、素直に応援したい気持ちと同時に、 やっぱり自身の経営力が至らなかったのではないか、チームビルディングが上手くいかなかったのではないか、他の会社の方が魅力的なんじゃないだろうか…と自問自答してしまいます。ここは自分自身、経営者として乗り越えていかなければならない部分であり、そういった変化も含めてより良い合作(株)にしていきたいと強く思います。

そんな中、合作を始めて4年で6回目となる採用活動をひらきました。

約20名の組織になり、順調に人が増えている側面もあり、人手が足りない部分もあり、常に悩みながらの採用活動です。自分たちがどんな会社なのか、理念はなんだとか、綺麗に書くだけにするのはちょっと違うなと思ったので、率直な心境も交えて、地域で人を採用することや、これからどんな組織にしていこうとしているかについて書いてみます。


地域に関わる事業にはだかる2つの壁

「地域に一生住む気があるのか?」の壁

地域づくり界隈、特に移住や定住の話になると必ず話題になることの1つが、「この地域にずっと居てくれるんですよね?」という柔らかな圧力問題。
その回答に「いや、そんなつもりは…」と言ったら最後、「もうあなたは仲間ではない」オーラを出されてしまうこともある…(恐怖!!)。地域を舞台に仕事をする際の残念な側面でのあるあるだと思います。

地域に関わりたいほぼ全ての人にとって、最初から一生その地域に住むかどうかは分かりません、分かれません。何かしらご縁や魅力を感じて住みたいと思っているし、住み続けたいと思える町だと良いなと、期待を寄せて引っ越してきます。しかしながら、合わないなと思ったり、家族の都合(子どもの進学や親の介護)や仕事の都合で別のところへ引っ越さざるを得ない可能性もあるわけです。そんな状態で、最初から「一生ここに住む覚悟は在るのか!」と問われたら、その時点で印象はマイナス100ポイントになりますよね。

とはいえ、移住してくる人たちも、そう問いたい気持ちも理解しています。
問うてくる人たちに悪意があるわけではなく、一緒にいてほしい・仲間になってほしい純粋な気持ちから出てくるものだというのは十分わかっていますよ!
ただ、人生100年時代と言われるこのご時世、働き方やライフスタイルも多様化している中で、先のことはみんな分かりません。だから、一緒に居られる時は一緒に楽しんで、別れも1つの人生だと思った方がいい。これは合作が関わる地域には伝えていかなければならない部分だと思っています。そんな合作(株)は、今後を見据えて何を考えているかというと、会社として異動がある・できる組織にしておきたいと考えています。

小さい会社のうちは、部署内で何かトラブルが起きてしまったら辞めざるを得ない(居づらい、やり直しづらくなってしまう)。地域も同じで、その地域内で試行錯誤する中で時には予期せぬトラブルに巻き込まれる、トラブルを起こしてしまうこともあります。そうなったら、自分の職種から離脱せざるを得ない。その状況はよくないし、もったいない。そのトラブルが乗り越えられない時には、異動という選択肢があって、地域で培った能力はそのまま別のところで仕事を続けられる。そんな方法が取れると会社にとっても個人にとってもいいと思います。

「地域の企業は地域に特化すべし」の壁

地域づくり携る企業は、地域に特化することが当たり前という風潮もあると思います。でも、その地域の中のことだけやろうとすると、当たり前ですが特定地域内でのマーケットは限られています。
そこに流れてくる資金の量、人の数も限られている中で、成長の限界も当然すぐ見えてくる。 その状態で頑張り続けていると、やっぱりこう、新陳代謝が起こらなくなってきたり、なんか煮詰まって、自転車操業的になって、徐々に崩壊してしまう…それが残念ながらすごく多いなと感じています。

そこに対してのアプローチとして必要だと考えているのが<ある程度の規模感をつくることで機能する組織>です。小さい組織の良さもありますが、 組織をある程度大きくして、部門が分かれていたり、分業ができていくことの強さもあると思います。
それを地域づくりの界隈でやろうとすると、1つの地域だけでは難しい側面があります。だからこそ、前回のnoteの邦男さんとの対談でも話していた、ちょっと広げてネットしていくことによって、規模感の弱みを超えていけるのではないかと考えています。

地域に特化したいろんなチームがつながった状態をつくれたら、1地域・1団体だと賄いきれない課題を、人材のシェアでクリアしていくことができる。

具体的な取り組みとして試みているのが、合作の事業共創チームです。 企業版ふるさと納税を活用した公民連携のマッチングは、それぞれの地域がバラバラにやると効率が悪い。地域も企業も互いの特性に合うマッチングをしたいのに、その情報や接点が整理されていない中で動くのは非効率です。いくつもの自治体との接点を持つ合作が、企業側とも繋がっていくことで、両者をうまく繋いでいくことができる。事業共創チームは、単独の地域だけでは難しいことを複数の地域にまたがってやっていく動きをしています。

また、小さい組織だとバックオフィス・間接部門やデザインチームにもなかなか投資できません。
大体社長が人事も総務も経理も営業も兼ねていて、非効率な動きになっています。また、ある程度の規模になってからと考えがちですが、合作では1つひとつの契約も大切にしているので顧問弁護士の契約であったり、先に背伸びをして投資をすることで円滑に回していける状況をつくろうとしています。(まだまだ足りていないと思いますが)
また、昨年からクリエイティブチームも立ち上げました。クリエイティブ、各種デザイン、広報、それぞれ専門性も必要なので、合作としてさまざまな案件にクリエイティブの力をシェアできるようになっていくと、組織としての強みになると考えて試みています。

このように体制をつくりながら、「この地域に一生住む気があるのか」問題も乗り越えたい。合作は特定の地域づくりに携わるけれど、何かあったときのために将来的に社員は異動もある・できる組織を目指しています。それはトラブルのときだけじゃなくて、勿論いつか自分の故郷でも同様の事業を立ち上げたい!といった思いにも対応できるようにと思っています。もちろん特定の地域のことにずっと関わってもいいし、何かあったり、次のステップとして別の地域や事業に携わることもできる。そんな可能性や選択肢を広げられる組織をつくろうとしています。

「何がやりたいか」よりも大切なこと

合作で学べること

では、そんな合作では実際に何ができるのか。一言で言うと

・地域を舞台に、事業を起こしていく手法
・異分野を掛け合わせることで新たな価値を生み出す手法

これらを身につけられる会社だと思っています。
そしてこれをもって組織を成長させていきたいと考えているので、これからも採用活動を続けながら、3年後には50名規模ぐらいの組織イメージを描いています。(これぐらいのスケールがあると、円滑にさまざまな事業やポジションが機能していくはず。)

合作に関わってくれるメンバーは特に、将来的に自分でも事業を起こしたい・地元に戻って活動したいと思っている人が多くて、それはとても嬉しいこと。願わくば、仕事を覚えてはい独立!というより、うまく社内起業的にネットワークをつくりながら関わり続けてもらえたら…と思っていますが、学べるものは学んで、生きるすべを合作で身につけてもらいたいのは素直な気持ちです。

と言うと、とても綺麗に聞こえますし期待値だけ上がってしまいそうですが、実際のところは、「学べる」といっても先輩たちが懇切丁寧に指導してくれて身につけられるというのではなく、一緒に切磋琢磨して、必死に今起きている地域や事業の課題に向き合って、なんとか乗り越えていくなかで一緒に学びましょう…!というのが現状ですが。
経験やスキルを綺麗に1つずつ習得していくほど整ってはいませんが、間違いなく現場で2‐3年一緒に事業に取り組んでいく中で、いくつものノウハウや知見が身についていると思います。

合作で学べる…一緒に試行錯誤できる具体的なトピックスとしては以下のようなものがあります。

■公民連携などの仕組みづくり
 行政との連携事業のつくり方
 多様なステークホルダーが連携する組織づくり
 地域おこし協力隊の制度づくり・サポート
 企業版ふるさと納税を活用した仕組みづくり

■サーキュラーエコノミー・資源循環
 脱炭素対策
 循環型社会の形成
 環境配慮型デザイン
 有機物堆肥化

■クリエイティブ
 建物の整備
 物件の運営、経営
 デザイナー、クリエイターと仕事をする手法
 物事を0から形にしていく手法
 広報、PR

■組織運営・経営
 財務・法務
 組織づくり・マネジメント
 採用・人材育成

■新規事業開発
 企画
 資金調達

合作でのキャリアパスイメージ

合作に入社して、未経験者の場合は、早ければ2-3年でマネージャーとしてチーム管理や事業を任されるようになります。実務経験者であれば、早ければ1年でチームを持つこともあります。チームで物事を進めていくことに慣れてくると、新しい事業の立ち上げにも繋がっていくのではないかと思います。
もちろんポジションによっては、専門職でその専門領域にずっと携っていくキャリアもあります。「5年経たないと次に進めない」というスパンは長すぎると感じていますので、2‐3年で個々人のキャリアが進んでいくペースで運営できたらな…と想定しています。

「何がやりたいか?」は他人に求めることではない。

合作は“ハーフビジョン”を掲げています。

ビジョンを持ち寄って実現できる環境であること、合わせて作ることを大切にしていて、今のところ会社として1つのミッション・ビジョン・バリューを掲げていません。

自分自身、正直なところ「何がやりたいか?は人に求めることではない」と思っています。
会社のビジョンに惹かれる、そのビジョンを達成したいからジョインすることもあると思うのですが、基本的にはビジョンはそれぞれが持っていればいい。ビジョンに共感していることにフォーカスしすぎると、ビジョンに対して少しでも違和感が出てきたら結局は離れてしまいます。
ビジョン経営、パーパス経営といったことも大事だと思うのですが、何を達成したいか・何をどう変えたいと思っているのかは、人それぞれ。お互いに持っているもの、やりたいことを持ち寄って、一人ではできないことができる環境をつくること、どうやって臨むのかというあり方を合作では大切にしたいと考えています。

ありたい状況をつくるために工夫して努力していくことが、合作的なお作法であり、知見やスキル、ノウハウに繋がっているのではないかと思います。そのため、「合わせてつくれば世界はもっと面白い」というあり方をベースに、その知見やノウハウを活用しながら個々の事業が広がっているかたちです。
鹿児島県の大崎町でサーキュラーエコノミーの循環型のまちづくりを推進しているチーム、公民連携の仕組みや地域おこし協力隊の制度を使った支援を全国に展開している事業共創チーム、社内外のデザイン業務を推進するクリエイティブチームの3つを現時点で展開していますが、今後新しく関わる地域や事業、テーマはさらに広がっていきます。
それぞれのテーマに対して取り組みたい人が来てくださってもいいし、もっと組織運営や経営に携りたい人が来てくださることも大歓迎。社内でテーマや職能を超えて行き来できるような組織にしていきたいと考えています。

組織をつくるときに考えること

組織づくりと作品づくりの共通点

これまで、さまざまな種類の法人をつくってきました。株式会社、NPO法人、社団法人、合同会社…どんな組織をつくる時も上手くいくときにしっかりとしていたのは、「事業で出したい成果に対して、適切な投資額がみえているか?そこを踏まえたうえで、出したい成果をつくるための組織を設計する」ということです。
当たり前だと思いつつ、特に地域系の事業ではそうじゃないことたくさんあるんです。国の予算や補助金がいくらあるから、その予算の範囲で出来る組織をつくるという思考になりがち。それではうまくいくはずがありません。

例えば大崎町の場合は、“世界の未来をつくる”というビジョンを掲げました。それを実現するためには、世界の未来をつくれる人材を集め、世界の未来をつくるレベルの相応の投資が必要です。そう言われるとその通りだよねと思うかもしれませんが、その思考がなかなかできていないところが多いと感じています。そんな中で大崎町では求めたい成果から逆算した計画で推進したからこそ、ある程度成果を出せていることに繋がっていると思いますし、合作(株)も同じ考え方で事業や組織をつくっています。

予算が出たら勝負するのではなく、やろうとしていることに対して適切な人数、適切な規模の組織をつくり、適切なビジネスモデルを組み立てていく。
これは、自身のバックグラウンドである美術の作品づくりのプロセスと共通だと思っています。
自分自身も最初は、作品制作は感情のままに表現していけばできるものだと思っていました。もしかしたら馴染みのない方にもそう見えているかもしれません。実際一部の天才は何も考えずに表現し始めて作品ができるようですが、普通はそれでは作品はできない。どんな作品をつくりたいのかを描き、ちゃんとそこに必要なものを洗い出し、段取りを整えて進めないとつくりたい作品はできないんです。
そのプロセスの中で、右脳的な、直観や偶発的なことも取り入れながら最終的に作品が出来上がっていくのですが、最初の左脳的な、ロジカルに考えてプロセスを整理して着手することも重要。そこを作家として身体感覚的に、「あるべき姿を実現する」トレーニングを受けてきたことが今の土台になっていると思います。

合作の採用がうまくいく理由と、難しいポイント

今回で6回目の採用活動ですが、幸いなことにこれまで毎回いいご縁に恵まれました。
なぜ採用が上手くいっているのかと聞いていただくことがありますが、課題と取り組みたいテーマへの共感を集められたことと、柔軟な働き方ができる組織をつくろうとしているところだと考えています。
地域づくりや官民連携に関して、多くの人が共通して持っている課題に真正面から取り組もうとしている。組織運営や地域との付き合い方、課題の捉え方、そしてそれらを共感したいテーマとして表現し、掲げられているので、興味を持ってくださる方が多いのではないかと考えています。

とはいえ、今回募集を開始した大崎町は、やはり地方ならではの採用の難しさは他の事業者さんと同じく常に抱えています。売り手市場、その地域でのマーケットが小さい、都心部で興味を持ってくださる人は多くても、なかなか気軽に「じゃあ見に行きます!見に来てよ!」が言いづらい、オンラインでは伝わり切らないものがある…ここをどう乗り越えていくか、合作としてもまだまだ挑戦しなければなりません。

今回募集をひらいた舞台は、鹿児島県の大崎町。
九州最南端の大隅半島に位置した、海の幸も山の幸も豊富なまち。合作の本社もここにあります。視察はもちろん、今年の4月に体験型宿泊施設「circular village hostel GURURI」もオープンしましたので、ぜひ滞在して、"サーキュラービレッジ"を体感してみてください。そして色んな声を聴かせてもらえたら嬉しいです。

合作って、難しい。強みも弱みも多様性。

社名やコンセプトは、強みでもあり弱みでもある

社名やコンセプトは、強みと弱みが一体になっていることがあるのではないかと思っています。例えば“イノベーション”を前面に出していたら、イノベーションを起こしたいけど起こせていない(ことを変えていきたい)とか。
合作(株)も、「合作することが得意なんでしょ」と思われがちですが、合作することはとても難しい(けど、目指したいしそうありたい)。だからこそ社名にも掲げている部分もあります。
民間と行政の合作は難しいし、都会のOSで動いている人と地域のOSで動いている人が一緒になったときに起こるトラブルに挟まれ本当に苦労してきたからこそ、そこをどうにかしていこうと挑戦していると思っています。まだ解決はできていないけどチャレンジしているし、解決できるとそれが会社の強みになる。

そこに面白さを感じつつも、やはり基本的には<異なる文化は混ぜると危険>なんだと思います。異なるOSの人同士が一緒になると、トラブルが起こる。そういったことを日常でやっている立場だからこそ言える、“合わせて作る”って本当に難しい。
そもそも合作の共同創業者は、僕が美術専攻で、西塔大海は物理学専攻、地方に住んでいて他の役員は全員フルリモート。他にも色んなバックグラウンド、専門性、職種の人が今集まってくれていて、住んでいる地域も働き方も関わり方もバラバラで、カオスです。多様性があって素晴らしいですねと言われますが、素晴らしいし面白いんですが、強みでもあり弱みでもあります。みんなが同じ教育を受けていないし、同じ思考でもない。4年間経営してきて、そこを束ねるのはもう…めちゃくちゃ大変です(笑)。「うちの会社のカルチャーはこうです」と堂々と言える経営者は本当にすごい。

そんなこんなで、自然とここに惹かれて入ってきてくださる人もいれば、卒業していく人もいる。まだまだ完璧な組織ではありませんが、強みはさらに磨いて、弱みを小さくしていく、組織をスケールさせていきたいフェーズです。
大崎町の事業を問わず、合作に興味を持ってくださる方がいらっしゃったらぜひお声かけください。お話しましょう。

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