プリンスのBorn 2 Dieを聴いて
2016年のプリンスの死後、最初のプリンスのオリジナル曲で構成されたフル・アルバム『Welcome 2 America』から、「Welcome 2 America」に次ぐ、2番目に公開された曲。21年6月3日、BBC Radio 6で初公開されたが、ほぼ同時にSpotifyやYouTube等で聴くことができるようになった。
10年3月12日ペイズリーパークでの録音。その日は「When She Comes」、「Running Game (Son Of A Slave Master)」も作られ、これらの曲もアルバム『Welcome 2 America』に収録されることになるようだ(ヴァージョン違い等はまだ不明)。オリジナルはプリンス、ベースがタル・ウィルケンフェルド、ドラムがクリス・コールマンのトリオによるもので、コ・プロデューサーとしてモーリス・ヘイズが後にオーヴァー・ダビングを施し、シェルビーJ、リヴ・ウォーフィールド、エリッサ・フィオリオがバックコーラスを加えている。
実は60minutesで断片が少し流されていた。カーティス・メイフィールド的ニューソウル風サウンド、そして同様彼を彷彿とさせるファルセットをプリンスは聴かせてくれるのだが、何層か重ねてシルキーさがより増した歌声となっていた。バラードではないのにとても美しいミッドテンポ曲となっていそうで、個人的にはかなりその出来に期待していたナンバーだった。レイシャル・イコーリティを歌っていると思われ、シェルビーが“黒人として生まれたプリンスだからこそ、その事を書いたり歌ったり出来たのよ。今発表するのは、正に時代に乗っている、良い時期なのよ”と語っていた。「Livin' 2 Die」という曲が95年夏に作られているが、それとは別のもの。
本当に美しいミドル曲を作ったなあ、という感想が出た後、「Shhh」って名曲が既にあるけども、とも思った。実際「Shhh」よりネオソウルな味付けにしてくれているし、後半がアップ気味になりファンクさが加わって自分の黒好みに寄ってくれている。あれだけ沢山曲を作っているのだから似ている曲が出てきてもおかしくない。でもそこはさすがプリンス、僕が痒いと思っている場所をしっかりプリンスらしい爪で搔いてくれる。
モーリス・ヘイズが、この曲が出来るきっかけを語っている。“プリンスが友人のコーネル・ウェスト(哲学者、アメリカにおける黒人問題を経済史、政治史、宗教史、倫理学の視点から論じた代表作『人種の本質("Race Matters")』は全米で35万部のベストセラーとなっている)のヴィデオをYouTubeで観てたんだ、彼がスピーチの中で、僕は僕のブラザー、プリンスを愛してる、でも彼はカーティス・メイフィールドではないからな”って言ってたんだ、そうしたらプリンスが、“お、そうか、よし、ならやるぞ”って"。
長谷川友抄訳の歌詞は以下の通り
彼女が来たよ、悪い女の子さ、君をハイにしてくれるよ。
死ぬために生まれた。
彼女はAからZまで何でも売る、ストリートで無理やり売り込む生活から自由になるためならなんでも。
昔教会から彼女逃げだしているんだ、自分の知っていることだけを強要するから、って。その時に彼女は純潔を失ってしまった。今はニューヨークからLAへ、改造計画奮闘中。どうしてそんなことしてるの?前からずっとそうだったのよ、って。
サッと後ろに飛んで盗む、ママのケーキを切ろうとする奴らがいると自分の番はその後になる。結局どうするのよ、ダディ?彼女にそのこと聞いたら、こう言ってた、
正しく生きないと、死ぬために生きているってわかるようになる。あなたも気を付けて。ハイにしてあげる、皆ハイになれるから、売春して頑張るわ。
彼女はオークランドのストリートをぶらついている。サンフランシスコ湾の辺りで働いて、彼女に関する限り犯罪は儲からないものではないのだ。最初のあの日から、跪くと真実を突き付けられることになる、我々は誰なのか、誰が我々を突き進めるのか。
彼女は3階の窓から覗いている際に気付いていたんだ。どういうこと?死ぬために生きる。なんてこと。彼女はもういなくなってしまった、彼女が大丈夫だと願っている、誰かどうなったのか知ってる?彼女は感じてたんだよ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?