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紙と石、そして村々へ:フランスの美を巡る旅〜リシャール・ド・バ製紙工房
今回、ニースからパリへ戻る途中、ぜひ立ち寄りたい場所がありました。それは、フランス中央部のアンベール(Ambert)にある「Moulin à papier Richard de Bas(リシャール・ド・バ製紙工房)」です。この工房は1326年に創業し、約700年の歴史を持つフランス最古の製紙工房の一つとされています。 また、2020年にはフランス政府から「生きた文化遺産企業(Entreprise du Patrimoine Vivant)」として認定されました。
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作品制作において、紙の選択は非常に重要です。紙の厚さ、色、質感、そしてインクの乗り具合などが、作品の仕上がりに大きく影響します。特にグラビュールでは、適した紙を選ぶことが求められます。フランスの版画仲間によれば、ヨーロッパのコットン紙が最適とのことです。和紙は繊維をつなぐために糊を加えていますが、コットン紙は100%コットンで作られており、繊維の長さなどが圧力をかけてインクを保持しやすいよう工夫されています。
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リシャール・ド・バ製紙工房に到着すると、まず目に入るのは、工房の動力源である水車です。この水車は、隣を流れるラガ川から引き込んだ水の力で回っています。水車の動力で動く木槌は、紙の原料となる繊維を作るために使用されています。案内してくださった方の説明によると、紙の原料は目の前にある布の切れ端でした。これらの布を2センチ四方程度に切り、水と混ぜて木槌で一日かけて砕き、繊維にします。日本のように木や真綿から紙を作るのは、ずっと後の時代のことだそうです。また、糊を使わないため、和紙のような薄い紙は作れないとのことでした。
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中世のこの時代、布は多く存在し、布を集めることを生業とする人々も多くいました。この川沿いにはかつて数え切れないほどの製紙工房がありましたが、現在ではリシャール・ド・バ製紙工房だけが残っています。漉いた紙は乾燥室で自然乾燥させます。ここで作られた紙は、サルバドール・ダリやパブロ・ピカソなどの芸術家たちにも愛用されてきました。 また、ノーベル賞の賞状や、フランス第五共和政の憲法の唯一の写本にも使用されたことがあります。
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今回の旅では、「フランスの最も美しい村(Les Plus Beaux Villages de France)」に選ばれた村々を訪れました。パリを出発し、最初に訪れたのはロマネスク様式のヴェズレー(Vézelay)です。その後、エデンの園のイブの彫刻で知られるオータン(Autun)へ向かいました。さらに、コンテ展の報告を兼ねてジャン=シャルルを訪ね、レ・ルス(Les Rousses)へ。アルプスの中にあるラ・グラーブ(La Grave)を訪れ、南フランスのグールドン(Gourdon)からニースへ。コアラーズ(Collonges-la-Rouge)を訪れ、モナコにも足を伸ばしました。南フランスのゴルド(Gordes)、アルランド(Arlempdes)、ラボデュ(Lavaudieu)も訪問しました。オーヴェルニュに戻り、ラヴート=シラク(Lavoûte-Chilhac)、リシャール・ド・バのあるアンベール(Ambert)、アブルモン=シュル=アリエ(Apremont-sur-Allier)、ニエーブル(Nièvre)、ヌヴェール(Nevers)、イーヴル・シャテル(Yèvre-le-Châtel)と、多くの場所を巡りました。7月の清々しい夏の日々で、多くの場所を訪れることができました。
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話が前後してしまいますが、前回の「石の話」の作品の土台が完成したところで、再びパリを出発するところまで戻り、次回からは「フランスの最も美しい村」について詳しくお話ししたいと思います。
リシャール・ド・バ製紙工房を訪れた際に撮影した短い動画を、ぜひこちらでご覧ください。