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子猫がやってきた話①


8月末日。
就職活動を終え、2週間後に新しい仕事が始まる。
せっかくの、大人の夏休み期間。
コロナ禍でどこにも遊びに行けないまま、また社会人生活が始まるなんて、そんなの辛すぎる…

そう思い、夏休みの思い出作りにと、友人とドライブへ出かけることにした。

車を走らせ、目指すは奥多摩湖。
エメラルドグリーンの湖はとっても綺麗で。
浮橋があって、湖の上を歩けるらしい!と知り、ルンルンで目的地へ向かったものの。
その浮橋が、台風のために壊れ立ち入り禁止になっていた。

ものすごく残念がっていたところ、落ち込むわたしたちを不憫に思った地元の方が、もう少し車で湖沿いを行くと、同じような浮橋があり湖畔に降りれるよと、親切に教えてくれた。

5分も走らせたら到着。
車が何台も停められるようになっており、すぐそばには定食屋さんがあった。

思ったよりも人がいて、やっぱりコロナで出かけられないとなると、野外でおいしい空気を吸いたくなるよね。

そんな風に思いつつ、湖畔に向かう階段を降りていたら。

友人が見つけた。「なんか白いふわふわが落ちてる…」

アヒルの雛かと思ったふわふわは、よく見たら子猫だった。

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ひとりでうずくまっていたその白子猫。
もうほとんど死にかけのぼろぼろで、ネズミみたいだった。
でもまだ生きている。

拾おうか、どうしようか。
拾ったとして、病院に連れて行く間に死んでしまったら…

迷っていたけれど、通りすがりのご家族が「いける!」と、励ましてくれたこと。
友人が、定食屋さんからダンボールを貰ってきてくれたこと。
診療時間外なのに、近くの動物病院に電話をしたら診てくれると言ってくれたこと。

何より、子猫が急に立ち上がり、わたしたちにむかって懸命に鳴いたこと。

もう行くっきゃないと覚悟を決めて。
奥多摩湖、湖畔に降りてすらいないけど。

「全然いいよ!また来よう。」

ごめん友人。ありがとう友人。

子猫を車へ運びながら、こんな話をした。

「もうこの子、名前はたま以外ありえないね。」

定食屋さんがくれた、たまごのイラストが描かれたダンボールに入れられて。
たまちゃんは、奥多摩湖から、わたしの夏休みの終わりにやってきたのです。

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