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正義の偽善(前編)
これは、私が昨年末にカンボジアを旅した話。
ふと思いつきで海外を見てみたいと思った私は、ネットで様々な情報を調べていた。
そして、自分のしたい事と照らし合わせた結果、辿り着いた国はカンボジアだった。
そして次の日には航空券を購入していた。
私がしたかった事とは
異国の文化を知る事
異国の子どもとサッカーをする事
日本でサッカーボール10球を購入し、数日分の着替えだけを入れたリュックサックを持って旅に出た。この無謀にも見える旅に1人の友達が付いてきてくれた。
海外に出たことのない、英語も喋ることができない2人の未知の旅が始まった。
日本の空港でいきなりハプニングが起こった。
出発時刻まで少し時間があったので朝ご飯を食べようと「すき家」でゆっくり過ごしていた。
出発時刻30分前に食べ終わり、搭乗口を目指して歩いていた。ふと近くの電光掲示板を見ると国際線の搭乗口に行くにはモノレールに数十分乗らないと辿り着けないという情報が目に入った。
それを見た私たちは全速力でモノレールまで走って向かい間一髪のところで最終の便に乗ることができ、なんとか出発時刻ギリギリに搭乗することができた。
その最後の一本のモノレールを逃していたらカンボジア行きの飛行機に乗れなかったという。
考えただけでゾッとする。
ベトナムの空港を経由してなんとかカンボジアの空港に着いた私たちは入国審査の手続きを行っていた。
そしてまたハプニングが起こった。
ビザを申請するのを忘れていたのである。
パスポートさえあれば入国できると思い込んでいた私たちはビザを取らずにカンボジアに来てしまった。
さらに日本円を換金せずにこっちに来たので空港で止められた私たちは身動きができなかった。
カンボジアの役人であろう人たち数人に囲まれ1時間ほど足止めをくらった。
リュックサック1つだけの怪しい日本人2人に容赦はなかった。言葉が通じない私たちは数少ない単語とボディーランゲージで応戦するしかなかった。
何か方法はないかと考えて出した答えがあのサッカー選手「ケイスケ・ホンダ」だった。
本田圭佑選手はカンボジア代表の監督をしたりカンボジアにサッカーチームを作ったりとカンボジアにとって多大なる影響があると感じた。
アイアムジャパニーズ
ケイスケ・ホンダ
と連呼していた。
すると狙い通りケイスケ・ホンダという言葉に反応した役人たちは急に盛り上がりを見せ私たちへの対応が激変した。
そこからスムーズに物事が進み、外にある換金所に行ってもよいと許可が出てお金を換金し30ドル(日本円で約3000円)支払い、その場を乗り切ることができた。
カンボジアという国でもケイスケ・ホンダは偉大だったのである。
そして、なんとかカンボジアに入国した私たちは日本人が経営するブランクゲストハウスに到着し一夜を過ごした。(1泊700円のオススメ宿)
そして次の日から、旅の目的の一つでもある異国の子どもとサッカーをするためにサッカーボールを配り始めた。
土地勘も、知り合いも、共通言語もない状況。
ましてや携帯も繋がらないという危機的状況を2人でひたすら街を歩き回るという原始的なやり方でするしかなかった。
幸い、目の前に小学校を見つけたので、中に入ることにした。
すると、中にいた生徒たちが寄ってきて話しかけてくれた。
ここでも私たちは、アイアムジャパニーズなどといった簡単な単語とサッカーボールをプレゼントしにきたよとジェスチャーを駆使してなんとか不審者だと誤解されずにサッカーボールをプレゼントすることができた。
生まれて初めてサッカーボールをプレゼントした瞬間であった。
そして、別れる時子どもたちはカメラに向かって最高のピースをしてくれた
ここで私は気づいた。
この2本指は世界共通だということを。
小学校を離れた後、またしばらく歩いていると近くに大きな公園を見つけた。
そこに、裸足で歩き回る1人の子どもがいた。
私たちは、その子に声をかけ「サッカーをしよう」とジェスチャーをした。
3人でボールを蹴っていると、学校終わりであろう中学生らしき男たちが僕たちも仲間に入れてと声をかけてきた。
そして4vs4のストリートサッカーが始まった。
とても楽しい時間だった。
そして別れ際に記念撮影をし、サッカーボールをプレゼントし「アイアム ジャパニーズ プロフェッショナル サッカープレイヤー」というハッタリを残してその場を去ってきた。
その背中はケイスケ・ホンダに少しでも近づけただろうか。