桜が散ってしまっただけなのに
昨夜から静かな春雨が地面を濡らしていた。
明け方もやんわりと降り続けたそれは
いつもの通勤時に視線の右側に映る
淡いピンクの密度を薄くしていた。
所々に柔らかい新緑がチラついて
新しく生きることを進んでいる。
毎年そうだ、
桜が散ってしまっただけなのに
春が終わったように感じる。
ほんの少しの肌寒さが
寂しい気持ちと同じくらいで
曖昧な季節の狭間にいる気分。
きっとどれだけ大切にしても
次の年もまたその次も同じように
風のように過ぎていく春を
生きていくんだと思う。