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『読みながら書く』 10

十、自分の心の全貌は分からない


自分の心ではあるが、その全貌はまるで分からない。全貌の分からないものだから、変化が生じたときも、変化の理由や全貌が分からない。何かが変わったという感じははっきりとあるのだけれど、それを説明することは今すぐには出来ない。
  
二日ほど前に「長寿の秘訣」というものを、半ば冗談で、半ば真面目に、書いた。不思議なことに「長寿の秘訣」は、この二日間いつも心の中にとどまり、独特の落ち着きを私に与えた。が、その理由はよく分からない。
また、文章を書くことを習慣にしている事自体が、なんとなく今の私に落ち着きを与えている。むろん文章を書いたことは初めてではないし、以前にも習慣的に文章を書いていた事はある。が、その時は今のような落ち着きは感じなかった。以前と今と、何が異なるのか、よくわからない。
人の心の変化の原因は無数にあるから、他にもいくつかの要因が重なって、現在の精神状態があるのだろう。

自分の心というものは、自分という国にとっての内閣のようなものではないだろうか。
この文章を書いている「今動いている意識」が例えば総務大臣だとしたら、他の閣僚たちの考えている事はよく分からないのである。


ケニチさんというユーチューバーがいる。大阪西成の居酒屋を巡り、嬉しそうに店に入り、メニューを読み、酒を注文し、刺身や揚げ物やホルモンを注文する。ビールを飲む時は驚くほど速く飲み干す。まぐろを食う時はわさびを乗せ、非常にゆっくりと箸を動かす。何を食べても美味い美味いと言い、何が起きても喜んでいる。ご機嫌である。
むろんこの人のことを深くは知らないし、呑み屋で好きな酒・肴を好きなように楽しんでいる時は誰でもご機嫌なのかもしれない。だがこういう、喜ばしいことをひたすら喜ぶという動画に、このところ非常に惹かれる。



不思議なもので、気楽にしていると、問題解決の方法がスッと浮かんだりして、物事が好転する場合も多い。
どうもご機嫌な文章を書いているが、ご機嫌が良いというのはとても良い事なのだ。
(2023年6月18日)

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