「くまのぬいぐるみ」(01)
チャックまはお散歩が大好き。梅雨の時期、雨が降っていてもどうしようもない時以外はお散歩に行きます。(まぁ、少しモノグサなので、やや短めになることが多かったですけど。)
その日も朝からシトシトと梅雨の雨が降り続いていました。コグマが「今日は雨の中を歩きたくないなぁ」と言うので、チャックまは仕方なく一人で午後のお散歩に出かけました。窓から手をふる笑顔のコグマに手を振り返して。
空は一面、濃い灰色の雲に覆われていました。その雲から灰色の雨粒が地面に降り注いでいました。いつもはどんなに雨が降っていてもお散歩をしているうちに楽しくなってくるチャックま。でも今日は、昼過ぎだと言うのに日が暮れたような暗さの散歩道を歩いているうちに、ちょっぴり後悔し始めました。
「あぁ、今日はやっぱりやめておけばよかったかなぁ…」
とは言えあんまり早く帰るとコグマに笑われそうです。チャックまはやせ我慢してもう少し散歩を続けることにしました。
そうして普段の散歩道をしばらく歩いていきました。もうこの辺りは人間も通り過ぎる道。でも悪天候なこともあってか、昼間だと言うのに人っ子一人いません。
「憂鬱な雨に加えて寂しい道だなぁ…」
チャックまの気分はますます暗くなりました。
視界は暗さと雨で数m先までしか見通せません。そんな中をチャックまはトボトボと歩いていきました。
最初、チャックまは石か泥の塊かと思いました。道の真ん中にこんもりと茶色い塊があったからです。でも近づくとそんなものではありませんでした。
「あ、ぬいぐるみだ…」
茶色いくまのぬいぐるみが雨に濡れて寂しげに落ちていたんです。
(02に続く)
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