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おもしろい話って「会話」で物語がすすんでいく。
夜の9時。ベッドサイドの照明を消して、布団の中へもぐりこむ。
「お話しよ」と娘がつぶやいた。
いつもは、今日あったできごとやら、明日のお弁当の話やらをする。だけど、ここ3夜はずっと「桃太郎」をお話してあげていた。
3回、桃太郎の話をしたわけではない。娘が眠ってしまうまでの10〜20分くらいずつ話をしている。
1夜目は、おじいさんとおばあさんが、山と川でどう過ごしているかを詳しくお話した。もはや桃太郎でもなんでもない。
おじいさんは、山でタヌキと格闘し、珍しいきのこを見つけ、食べるかどうか葛藤のすえ、危険と判断し食べるのをやめた。もはや芝も刈ってない。
おばあさんは、川で洗濯をしていたら、おじいさんの着物を流されてしまいそれを取り戻すため、岩をジャンプ。すべって転びそうなところを白鳥に助けられ、無事に洗濯へと戻っていった。
途中で娘が眠ってしまったのがわかったが、川上から大きな桃が流れてくるくだりまで、お話した。なんと言ってもこのお話は桃太郎なのだから。
2夜目。
桃を切る下りでは、桃の中にある種が固くておばあさんでは切れず、おじいさんがノコギリを持ち出し、ギコギコ。娘は桃太郎を切ってしまうのではないかと本気で心配していた。
3夜目は、10歳になった桃太郎がはじめて鬼と出会うシーン。
村外れで鬼にぶん殴られ、大切なおにぎりまで奪われる。桃太郎が鬼を退治しにいくための大切な動機が生まれるシーンだ。
***
半分寝ぼけながら適当に話して聞かせているだけだから、話はめちゃくちゃだし、正直娘が面白いと思っているかどうかもわからない。ただ文句も言わずに黙って聞いているから、まあ聞けなくはないんだろう。
だけど、ぼくの中では桃太郎の物語が勝手にどんどん膨らんでいくのだ。
物語を書く人たちが「登場人物が勝手に動き出す」というようなことをいうけど、そんな気持ちをほんの少しだけ味わっている。
絵本を読み聞かせるよりも、(一応)創作しているぶんだけこっちとしてはおもしろい。
そして、この作業は文章を書いたり、人前で話したりすることが多いぼくにとってはとてもいい練習になる気がしている。
人前で話をするとき、すこしでも楽しみながら聞いてもらいたい。それは芸人さんのようにいっぱい笑ってほしいということではなく、たいくつさせずにちゃんと聞いてもらいたいといつも思っている。
そして、おもしろい話って「会話」で進んでいくシーンが多いのです。
落語はほとんど会話で成り立っている。すべらない話だって、トークの中には会話がたくさん含まれている。ドラマやコントも会話が主だ。
実際に桃太郎も「会話」で物語を進めている。やってみると説明(ト書き)ではなくて、「会話」で物語を進めていくというのは、結構難しいんだなとわかる。
だけど、そのおかげで物語はどんどん膨らんでいっている。
***
翌朝、娘はママに「まだ鬼ヶ島にも行ってないねんで」とボソリと言った。
桃太郎がいったいいつ、鬼退治へと向かうことになるのか。それはまだぼくにもわからない。(その前に娘に飽きられてしまいそうだけど)
では、また明日。
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