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自分の才能を知る方法その2・実家は太いに越したことはない

ということで皆さんご機嫌麗しう。ニューヨークにおります畑です。
順調に記事は書いておりますがニューヨークのニュの字も出てこない内容ばっかりですね。まあ現地情報は後々ご紹介します。

ということで少年少女および道に迷った若人たちに捧げるおっさんからのアドバイスその2です。今回の内容は若干世知辛い内容となっておりますが、基本的には嘘は書いておりませんよ。中高年のおっさんおばさんも「ほんとその通りよねーそうよねー」と相槌よろしくお願いします。

さて本題。
いきなりですが、皆さんこの方ご存知でしょうか?

知性と色香の絶妙なハーモニー

はい、社会学を学んだ人であれば必ず知ってないとおかしいフランスの偉大なる社会学者、ピエール・ブルデュー先生です。日本だと最近「文化資本」という言葉が流行っておりましたが、このキーワードはこの方の思想から拝借したものだと思われます。まああの言葉使ってる人の殆どはブルデューの著作なんて読んだことないとは思いますが。当時のフランスではやれポストモダンの記号の戯れだのアンガージュマンで嘔吐だの、と思想家が思想に淫していた時代に戦地に赴き実証データを取り厳密なデータ調査に基づいて有無を言わさぬ思想と結論を貫いたというガチの実証派の社会学者です。

そのブルデュー先生の著作の中に「遺産相続者たち」という著作があります。もう読んだのが20年以上の前で本も手元にないのであやふやで申し訳ないんですが、確か美術館にやってくる観客の社会階層と、そういう文化的な行為がどうやって親から子供へ伝達されるのか、という非常に興味深い内容の本だったと思います。そしてここからさらにブルデュー社会学は深掘りを進めた結果、大作にして大問題作、「ディスタンクシオン」に発展していきます。

とここまで偉そうに書いてますが、ブルデュー先生本当に難解なんです。
しかも「難しいものは難しく書くしか方法がないんだから仕方ない」とご本人さんが言い切ってるのでもうどうしようもない。なので詳細な思想についてはきっとたくさん解説本があると思うのでそちらを当たってください。

でまあブルデュー先生が何をしたか、というと。
フランス社会での社会階級(収入の差、でもある)と趣味の相関について、を統計データに基づいて調べてみたわけです、ええ。そうしますと、
階級と人間の趣味には相関がバッチリある、ということが判明したわけです。例えば。

  • 抽象絵画を好むのは上流階級、

  • 印象派は中産階級、

  • サッカーは貧乏人

  • ボディビル愛好も中流より下、

など。当然これはフランスでの調査なので、これが他の国や地域には当てはまりませんよ、ということは先生自らがおっしゃってはいますが、要するに各個人の趣味、ひいては美意識などは結局どのくらいの収入のどの階級に属しているかで大体決まっている、ということが実証データで明るみに出ちゃったわけです。

まあ先生はここから「ハビトゥス」などの重要なキーワードを使って社会における人間の行動のあり方を深掘りしていくわけですが、まあその辺は専門家にお任せしましょう。ここで僕が言いたいのは、「人間は思っているよりも自分が所属する社会階級(=収入)に縛られている」ということです。しかもそれが過去数世代から引き継がれたものだ、ということなのです。

やはり齢50歳ともなりますと、いろんな方とお知り合いになります。まして僕も一応写真という表現の世界の隅っこにおりますから、やはりアーティストと呼ばれる人やクリエイティブな人とお話をすることが多いわけです。
正直僕も元社会学の研究者の卵(孵化せずピータン化)ですから、どうしてもこういう人たちをみるとブルデュー先生のことを思い出すわけでして。なのでついつい根掘り葉掘りご家族や家庭環境のことをインタビューしてしまうわけです。そうしますと。

ブルデュー先生の言ってることはほぼ正しい

という現実にぶち当たります。一言で言えば、
アーティスト・クリエイティブ業やってる人の親は高確率でアーティストか高い教育を受けた裕福な家庭の人。さらに遡るとおじいさん、ひいおじいさんの代で大学教授だの資産家だのが顔を出す。

当然例外はあるとは思いますが、「アーティスト・クリエイティブ業の人の親は大体裕福層かインテリ層」というのはかなりの高確率で当てはまります。

でもまあこれは僕らの世代を考えると当たり前なんですよね。僕の父親や母親の世代(今80歳前後)の人たちって、大学の進学率って10%くらいですからね。戦後すぐ生まれで大学に行ける人、って相当裕福な家庭なんですよ、実際。当然東京あたりだと大学の進学率は高くなるでしょうし、地方だとその確率はもっと低くなるでしょう。親がどこに住んでいるかで進学率も変わります。

で、自分のお父さんお母さんが大学に行ける理由、っていうのは結局その親の世代、つまりおじいさんおばあさんが裕福だ、という意味になるわけです。そしてそのおじいさんおばあさんが教授や資産家であった場合、ひいおじさんの世代がめちゃくちゃ裕福か超エリート、という話になってきます。つまりこの段階で3〜4世代の収入差の結果が今に影響していることになります。ぶっちゃけ言えば、

あなたの今の現状はおじいさんおばあさん世代の収入・社会階層ですでに大体決まっている

という情け容赦ない現実が見えてくるわけです。
正直僕も愕然としました。社会学者の研究者の皮蛋としてブルデュー先生のおっしゃていたことは頭では理解していたけど、実際聞き込み調査をしてみると、まさかここまでとは、、、と。今から100年前くらいにお祖父さんお婆さんが生まれ育った場所、環境であなたの今が大体決まっている、と思うと、俺の人生一体何?と思ってしまいますよね。
でもそれがこの世の中の現実なのです。

親の貧富の差が自分の住む世界の差。

これが50歳になった僕が目の当たりにした厳しい現実です。若い頃には見えなかったものが、年齢を重ねるごとに少しずつ目に見えてきます。豊かな家庭で育つ、ということがどれだけのアドバンテージを持っているのか、、、

じゃあお前の親はどうなんだよ、と言われると思うんですよ、ええ。
うちの家、まあまあ貧乏でした。

少なくともエリートと呼ばれるような家じゃない。親は田舎から出てきた高卒の貧乏人。父は荷物配達して学費を稼いで、母は昼間は工場で働いて夜は工場併設の夜間で勉強してたような人。僕は運良く高校時代は当時関西でトップクラスの進学校でガリ勉していましたが、周りの同級生は家に帰ったらエアコンの効いた部屋で勉強してたんだ、っていうことにようやく気がついたのが40過ぎてから。うちの家、まともに使えるエアコンがありませんでした。

でもこの事実を前にして、「ああやっぱりな」と思ったのも事実です。
ああそうか、住んでいる世界がそもそも違ったんだな、と。

僕は常々アーティストと呼ばれる人やクリエイティブな職業の人たちに微妙な違和感を感じていました。別にその人たちが悪い、とか、そういうことじゃないんです。ただ、「なんでこの人は自分の作ったものにそこまでの信頼があるのだろう?」とか、「どうしてそこまで自由に行動できるのだろう?」とか、とにかく彼らの生き様に違和感を感じるわけです。で、自分が彼らのように考えて行動できるか?って言われたら絶対無理。サラリーマン家庭で育った凡庸な人生のためにセットされた価値観が自分に向かって囁いてくるわけです。

「なんでそんなもの買うの?生活に役に立たないじゃん?」
「もっと安いのにしないと後で困るよ?それ持ってて飯が食えるの?」
「形のないものに価値があるはずないじゃん?」
「9時から5時まで働くのが真っ当な人間のすることでしょ?」

自分が親や環境から学んだ価値観と、自分が今いる世界の価値観がずれていると結構キツイです。その価値を補正するだけでも相当葛藤しますし、それだけでエネルギーも消費します。

マジでこんな気分になるyo!

ということで改めてお若い皆様に考えていただきたいことがあります。
あなたのお父様、お母様、おじいさん、おばあさんの生活は豊かですか?
ご職業は何ですか?高い教育を受けて平均よりも高いお給料をもらえる人たちですか?もしそうだとしたらあなたはかなりのアドバンテージ持ちです。そのアドバンテージを積極的に活かすのがあなたの人生をより良いものにします。やっぱりね、親から相続しているものをちゃんと冷静に査定したほうがいいと思うんですよ、自分の人生を選ぶにあたっては。そこを使うか、それとも反発するかは、査定してから決めれば良い、と。

まあ僕みたいに親がそんなに裕福でもないな、と冷静に判断したあなた。
残念ですがあなたには豊かな人より努力が必要です。しかし若い頃にそこを理解した上で自分を伸ばす訓練をすれば、最終的に親から富を受け継いだだけで何も努力しなかった人よりは優位に立てます。

持たざる者が豊かな人間と同じスタートラインに立つ方法とは?
これはまた次の機会に書いてみようと思います。

あ、インスタやってます。よろしければご覧くださいね。





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