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曲が皆に届くまでに著作権が果たす役割 ~エディンバラ授業ノート#4~

前回の授業ノートで知的財産権と、その中でも特に著作権のことについて書きました。

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でもこれだけだと具体的にイメージつかないですよね。
授業でも知的財産権とはこれだよ、著作権はこういうことを守ってくれるんだよ、と言われたところで、知的財産権初心者からしたら
(* ̄- ̄)ふ~ん
って感じですよね。

なんかわかったようなわかっていないような、微妙な感じでした。
そんな状況で迎えた次の授業でやったことが、実際のケースで知的財産権の役割を考えてみるということでした。
これは非常に良かったですね。
このケースではこういった著作権を考えなくてはいけないよね、注意すべき点はここだよね、という感じです。
そのケースをそのままここに載せてもいいのですが、せっかくなので曲が作られて皆さんの手(というか耳)に届くまでの流れに沿って、どういう著作権が関わっているかを見ていこうと思います。

スタートは著作権所有者
(著作権と著作隣接権)

まず前提として著作権の目的は、権利所有者の意思とは関係のないところで使用されることを防ぐことでした。
そして著作権は基本的に作成者が作成した段階で自然発生するもの(お役所での手続きなどは不要)でした。

Mr.Childrenの曲であれば作詞作曲が桜井和寿さんであるケースがほとんどです。
なので曲の著作権と歌詞の著作権のどちらとも桜井さんに帰属しており、桜井さんの意思とは関係のないところで楽曲が使用されないようにするために著作権が存在するというわけですね。

また、著作権と一口に言っても、その曲を演奏する権利(演奏権)、録音してマスター音源を作る権利(録音権)、マスター音源から複製品を作る権利(複製権)、複製したものを売ったり貸し出したりする権利(頒布権)などいろいろな権利があります。これらを著作隣接権と呼んだりします。

レコード会社の役割

あれ、録音する権利が桜井さんにあるならCDってどうやって作ってるの?
と思ったそこのあなた、なかなか鋭いですね。

基本的に著作権所有者はレコード会社と契約を結んで、録音する権利(マスター音源を作る権利)をレコード会社に許可しているのです。
つまり、レコード会社と作曲者の間で契約を交わして合意の上で録音がされているので問題ないということですね。

また、CDを販売する場合、録音したマスター音源を複製する権利、複製したものを頒布する権利なども必要になるので、そのあたりの権利についても著作権所有者とレコード会社の間で契約を結んでレコード会社が進める場合が多いかなと思います。

Mr.Childrenの場合、著作権所有者である桜井さんと、レコード会社(レーベル)であるトイズファクトリーの間で契約がされているというわけですね。

今の時代サブスクリプションで聴くからCDなんて買わないよという感じかもしれませんが、音源作成などでレーベルが変わらず関わっている場合は録音権、頒布権がレーベル(契約によっては著作権所有者)にあるということは変わりません。

桜井さんは自分で録音しないの?という感じかもしれないですが、楽曲をリリースする際に音源を作成する場合、かなり大掛かりな設備や大きな費用が必要になるとのことで、レーベルがその費用を立て替える場合がほとんどのようです。
桜井さんほどになれば、自分でレコード会社を立ち上げてそこでマスター音源作って販売するとかも十分あり得そうですよね。

CD販売

Mr.Childrenは桜井さんの作詞・作曲フェーズ、レコード会社を交えた演奏&録音フェーズを経てマスター音源を作成&パッケージのCDを作成するところまでたどり着きました。
後は売るだけですが、まずはCDショップに販売することで利益を得ていた従来のモデルを考えてみます。

正確にはわかりませんが、おそらく
レコード会社→卸売→小売店
という流れでCDは販売されていたのではないかなと思います。
ちなみに、CDのジャケットなどはまた別のアーティストに委託されている場合があるので、そのジャケットの著作権はそのアーティストに帰属するか、契約によってレコード会社が所有しているケースなどが考えられます。

トイズファクトリーが卸売りとやり取りしているイメージがあまり湧かなかったので調べてみたんですけど、販売受託はソニーミュージックがやってるんですかね?たぶん。
なので、
トイズファクトリーでレコーディング
→マスター音源をもとにCD作成
→作成されたCDを卸業者にソニーミュージックが販売
→卸業者から近所のCDショップに届けられる
→CDショップでエンドユーザーが購入
という流れなのかな。もし間違っていたら教えてください。

そして卸売りに販売するタイミングでの収益を
Mr.Children、トイズファクトリー、ソニーミュージックの3社で分配しているはず。

そんなこんなでCDを手に入れた私たちですが、CDを買ったからといって著作権は私たちに移転していないので注意してください。
物理的なCDという物体の所有権は購入者に帰属しますが、著作権という知的財産に対する権利は桜井さんやトイズファクトリーに帰属したままなので、CDを無断で複製することや耳コピして楽譜を書くこと、演奏することは著作権侵害になります。
(もちろん例外はあるので安心してください)

ストリーミングサービス

いやいや、CDなんて前時代的なもの買わないよ、時代はサブスクでしょ、というわけでサブスクでのビジネスモデルを考えてみようと思います。

サブスクの場合、Apple MusicやAmazon Musicなどでエンドユーザーがサブスク料金を支払うケースと、Spotifyのように広告料をスポンサー企業からもらうケースがあります。
いずれの場合においても、各プラットフォーマーで分配計算がされます。

例えば年間で再生された回数の合計が100億回、そのうちMr.Childrenの楽曲の再生回数は1億回、各プラットフォーマーがサブスクや広告から得た収入が10兆円だったとします。
まず、10兆円のうち例えば30%とかがプラットフォーマーの取り分という形で持っていかれます。
残った70%の7兆円のうち、Mr.Childrenが再生された回数の割合は100億分の1億で1%、というわけで0.7兆円がトイズファクトリーに流れてきます。
その0.7兆円をトイズファクトリーとMr.Children間で交わされた契約内容に応じてMr.Childrenに分配する、というのがサブスクのモデルになります。
※※例として挙げているだけなのですごくテキトーな数値です※※

ストリーミングサービスにおいても、CD購入時と同じように知的財産権が消費者に移転しているわけではないのでご注意ください。

ライブでのパフォーマンス

CDを買ったりストリーミングサービスを使用する以外に、ライブ演奏でお客さんに届けるということもあり得ますよね。
ライブでのパフォーマンスには演奏権が関わりますが、これは桜井さん(もしくはMr.Children)が持ったままになっているはず。
(ただトイズファクトリーはアーティストのプロモーションも行っているということなので、ライブの開催のサポートとしてトイズファクトリーが関わっているのかもしれません。)

ライブのチケットを購入したからといって録音権・録画権などがチケット購入者に移転しているわけではないので、ライブ中の録音・撮影は著作権侵害になります。
ここら辺は映画泥棒で聞き馴染みのあるところかなと思います。

まとめ

今回の記事では音楽業界を例に、著作権がどのような役割を果たしているのかを見てみました。

著作権と一口に言っても、演奏権、録音権、複製権、頒布権などの著作隣接権があり、そういった著作隣接権は作曲者からレコード会社に移譲されていたりして、曲を流通させるためにすべての権利を著作権所有者が独占しているわけではないということがわかっていただけたかなと思います。

この記事で前回の記事よりも具体的なイメージを持てたのではないかなと思います。
次回の授業ノートでは今回の話をベースに「これって著作権侵害になるの?」というところを見ていこうと思います。お楽しみに。

#Mr.Children大好き

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