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第3話: 「選べない」人へ。肚をくくること。

新人ちゃん:2話では「自分が自分にコミットできてるか」というお話でした。どういう意味です?

山上:例えば、ナレーターから「このサンプルは、AさんにもBさんにも評価されるものにしたい」と依頼していただくことがあるんですよ。で、このナレーターさんが今売れられてない場合、僕はまず「中途半端なもの作ってもどちらにもたぶん届きません。なので今回どちらか選びましょう。残ったもう一方については費用が抑えられる他所スタジオなどで来月でも半年後でももう1本録れば済む話ですから」って勧めたりするんですけど

新人ちゃん:迷って決められない時の気持ちわかります〜‥‥

山上:選ぶというのは他の可能性を全て捨てるってことですからね〜。ほんと悩んじゃいますよね。わかる。よぉ〜くわかるんです。でもだからこそ、売り込み先に一番問われると思うんです。

新人ちゃん:肚が括れてるかどうかってことか!

山上:そうそう。そこで「できれば1回でなんとかしたい」「両方に売れたい」と返事されると、僕としては共感はあるものの「あ〜でも僕にはそんな魔法みたいな力はないし‥‥」ってなるんです。「ってことは向き合えない」‥‥「向き合わないってことは胸張って料金請求できない‥‥」って流れになるので‥‥

新人ちゃん:でもでもでも!今売れてないんだもん‥‥「どっち」なんて考えるような立場じゃないから‥‥

山上:どうしても選びにくい時は割合だけでも構いません。Aさん6割Bさん4割とか、優先順位さえつけてくれれば判断することができます。とにかくフィフティフィフティだけはだめ。夢みたいな話には夢みたいなお返事するしかなくなるからです。とたんに胸張って料金請求できなくなってしまいます。

新人ちゃん:あ〜。「選べ」って言われるととにかく白黒確定しろって言われてるのかと思ってたけど‥‥揺らぎはあっても良いんですね。ちょっと安心しました。

山上:僕と話してると「なりふり構わずナレーションを最優先しろ」って聞こえる人もいるみたいですけど‥‥そんなこと言ってないんです。
例えば事務所の意向やご家庭の事情などで出来ないことがある人だとしたら、それは絶対大切にした方がいい。できないことがあることは責めたりしません。
そうじゃなくて僕の考えはむしろ逆でちゃんと探りたいんです。「できることできないこと」をはっきりさせることで、逆に最大限の結果を出したい。

だから、選択だけはハッキリ教えてほしいんです。

新人ちゃん:あ〜売れられてないからこそ追い詰められてて、選びにくいんですよね〜わかるな〜……たぶん、自分のアピールを半年〜1年とかの中期的な視野じゃなく、今日明日の短期的な視野でしか見れてないからだろうなぁ〜‥‥売れられてないからフォーカスがどんどん手前になってるんだ‥‥!

山上: 僕も顧客満足だけを優先して、振り付けしまくってその場限りに「プロになった気にさせる」のって実はとても簡単なんですけど。でもそれだとどうしても、僕は胸張って料金請求できない。

新人ちゃん: う〜んわかってきました。ごりっぱスタジオって要するに‥‥頑固オヤジのラーメン屋ってことね?

山上: 例え悪いでキミ! でもそういうことや!ほな次の話題いくで!

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