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刺繍も絵だとおもう

ここ数年、書店で見かける刺繍本の数が増えてきた。地方に住んでいてそう感じるくらいだから、都市部の大型書店の手芸本コーナーでは、どれだけ多くの種類の刺繍本が並んでいることか。華やかだろうなあ。

もちろん私も何冊か持っているし、しょっちゅう立ち読みもしているんだけど、時々ふと頭をよぎることがある。「みんな、きちんと刺し過ぎていないか?」

市販の手芸本は教則本としての意味合いが強いのだから、模範的な刺し方をした作品を載せるべきなのだろうとは思う。それに、著作者である手芸家の方々は、美的センスもさることながら、そもそもの技術レベルが高い。だから、どこから見ても隙のない、美しい仕上がりの作品がページを埋めることになる。それはよくわかっている。

だけど、と思う。刺繍を「手工芸品」というジャンルからいったん引き離して考えてみてはどうだろう。刺繍とは布に絵柄を糸で刺していく行為だ。ということは、それは、布と糸を画材とした絵画だと考えてもいいんじゃないだろうか。

刺繍は絵だ。そう思うと、自由度がグッと上がる。視野が広くなる。お手本の通りに刺さなくてもいい。自分で下絵から作る場合でも、刺繍しながら絵柄が変わっていってもいい。それは失敗ではなくて、方向転換だ。針目が揃わなくてもいい。むしろ揃わなくてもいいだろう。例えば油絵で、筆のタッチが均一だったら不自然じゃないか。刺繍のステッチも、絵画みたいに即興的で勢いがあるほうがいいのではないか。

そんなことを考えながら、8年ぶりに刺繍をしてみた。楽しい。適当に描いた鳥のイラストの上を適当にぐいぐい刺す。私には、お行儀のいい刺繍はできない。でも、これならできる。できるものを知って、同時に自分自身を知る。いくつになっても学びだなあと思う。


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