料理は○○。 マジックは?
まだ四十代にして中国料理の達人シェフ五十嵐美幸さんが、テレビのインタビューに答えて、「料理は人柄だ」と言っているのを見ました。同じレシピでも、優しい人の料理は優しい味に、強い人の料理は力強いというのです。そして迷っている時は味がぼやけるのだそうです。
マジックは、手順書や説明書通りやっても人それぞれ違うマジックになることはよく知っていましたが、料理もそうなのだと知ってちょっとびっくりしました。レシピ通りに作っても、作る人によって味が違うというのですから。
落語家の桂米朝師匠はこう言ってました。「ええか。やっぱり最後は人間やで。人柄や。どんな上手くなっても、どれだけ売れても、人間が大事やねん。これは落語だけと違う。踊りやってる人も、音楽やってる人もみんな言うてる。人間性やて。そやさかい人間を磨いていかなあかんのや」
別の世界の名人に習わなくても、我らマジック界の先達にも言葉があります。
「マジックは人なり。手品の大きな魅力は、優れた手品師の人格からにじみ出る魅力である」____ダイ・ヴァーノン
若かりし頃のマリックさんは、これを次のように補足していました。「自分の演じている手品が観客に好感を持たれて見られるためには、まず術者自身の人柄に好感をもたれるように心がけねばならない」
よいマジックを演じるために「手品は人柄」という言葉を、いまいちど深く味わってみませんか。素敵なマジシャンが増えることを期待していますし、アマプロ問わず、これが成功の秘訣にもなるのではと思います。
立川談志師匠はこう言っていたというのを最近知りました。「芸は、うまいまずい、面白い面白くない、などではなく、その演者の人間性、パーソナリティ、存在をいかに出すかなんだと気が付いた。少なくとも、それが現代における芸だと思ったんです。いや、現代と言わずとも、パーソナリティに作品は負けるんです」
深いですね。しかししかしですよ、同時に作品がないと、その肝心のパーソナリティも出せないのです。自分のパーソナリティが出せる作品を探したり、作るのも、人柄磨きと関連させることが大事ってことになるような気がします。
<CM>
「見てもらえますか」とお願いするマジックから、「見せてー」と言わせるマジックに変えるには。そして「どうすれば、終わった後にハイタッチしてお互いに楽しめるマジックになるのか」を考えたエッセイ「win-winエフェクトすすめ」も収録。