【インタビュー】「未来を選択する力を」ー就労継続支援B型カフェ「クランク」管理者羽田和剛さんに聞く
観光地として有名な、広島県福山市・鞆の浦(以下、鞆)で高齢者介護施設や放課後等デイサービスを展開する「鞆の浦・さくらホーム」は昨年夏、まちの大きな神社の参道沿いにカフェを開きました。その名も「スープとおにぎり クランク」。
新たな集いの場として盛り上がりをみせているクランク、実は就労継続支援B型事業所でもあるのです。大きな庭には駄菓子屋も併設しており、放課後の子供たちを引き寄せています。春には近くに相談支援事業所も設立する予定。クランク管理者の羽田和剛さんに、立ち上げの思いを聞きました。
障害児の「卒業後」を支えたい
――羽田さんは約10年間、さくらホームが鞆町内で運営する放課後等デイサービスの「さくらんぼ」の管理者を務められていました。就労支援施設立ち上げを決意された背景を教えてください。
さくらんぼを利用している子供たちの「卒業後」を支えたいという思いがあったからです。放課後等デイサービスを利用できるのは、高校を卒業する18歳までです。ですが利用者の中には、年齢を重ねるにつれひきこもりがちになる子、卒業後の進路が分からない子もいて、気がかりでした。子供に関わるなら、大人になった時の居場所もつくりたいというのは常々考えていました。
――カフェという形態にしたのはなぜでしょう。
就労継続支援B型は一般的に工賃が低く、課題意識がありました。そんな中、ご縁があってソーシャルグッドロースターズさんに見学に行かせていただいたのが大きな刺激になっています。利用者の方たちが焙煎士として生き生きと働いていたのを見て、自分の中にあった「就労」のイメージが覆りました。
今、障害のある方の働く先は選択肢が多い状況とは言えません。洗練された空間で、「かっこよく」働くことを、選べるようにしたいです。
現在働いてくれている利用者さんの中には、将来の夢は「スタバで働くこと」という方もいますよ。
未来を選択する力をつける
――クランクではどのような仕事ができますか。
調理やフロアの他、生豆のピッキングが主な仕事です。そのほか、農作業(現在、鞆町内に畑を整備中!)や清掃など本人の意向に合わせて柔軟に対応します。さくらホームを利用している高齢者で週に一度、庭整備のお仕事にきてくれている方もいます。
また支援では「スモールステップ」を大事にしています。例えばスープを作るには、まず「野菜を切る」という作業から始め、徐々に「決められた形に切る」「必要な材料を冷蔵庫から選ぶ」と仕事に挑戦していってもらいます。
私たちが目指すのは「未来を選択する力をつける支援」。達成感を積み重ねることで、自信につなげるねらいがあります。
――「クランク」という店名の由来は。
鞆で「クランク」の道といえば、ここのことだったので。
クランクって、カクカクと曲がった道路で、車が通るときは減速する場所ですよね。わたしたちの事業所も、そんな場所でありたいと思っています。人生には、ペースが落ちる時や、少し休憩が必要な時もある。曲がり角にいる人たちに寄り添い、ゆっくりと伴走するのが「クランク」です。
――併設の「だがし屋 クランク」は夕方、学校帰りの子供たちであふれかえっていますね。
差別は無知から生まれる。自分の幼少期を振り返っても、障害のある方への偏見がなかったとは言えません。でもその意識は体験で変えられるとおもっています。駄菓子屋に来る子供たちが日常の中で障害のある方と出会う、そういう場になればいいと思っています。
「鞆でなら、生きていける」
――さくらホームで、介護や障害児支援に携わってきた羽田さんの根底にある思いはなんですか。
全て「鞆を暮らしやすい町にするため」です。鞆を「この町だったら生きていける」と誰しもが思えるようにしたい。
さくらんぼには町外からの利用者も多いですが、鞆に来るといつもいきいきと遊んでいました。そんな子どもたちの姿を見て、近所の人たちも自然と声をかけてくれ、子どもは地域になじんでいます。クランクの利用者たちもきっと「あんたクランクで働いとる人じゃな」と話かけてもらえるようになるはずです。福祉のプロとして、鞆での居場所づくりを支えます。
クランクは利用者に「仕事が終わっても残っていたい」と思ってもらえる職場でありたいです。居残って利用者同士ゲームするもよし、地域の人と話すもよし。子どもも大人も、障害があってもなくても、誰もが一緒にいられる場所を目指しています。
クランクの営業日やメニューのご案内はこちらから、公式インスタグラムから。
一緒に働くメンバーさんは、こちらから募集中です。
自分らしい働き方を一緒に探っていきましょう。
文・写真:高本友子