OECDのAI原則 - 改訂内容のまとめ
2024年5月3日、OECDがAI原則を改訂しました。改訂内容について、日本の報道では「偽情報の拡散への対応」「知的財産権の侵害への対応強化」などと書かれているものが散見されましたが、少し探しても改訂箇所を見え消しで記載されている資料を見つけられなかったため、自分で整理したものをこの記事の内容としています。
*最新版を2019年版と比較しています。文言定義に関しては2013年11月に一度改訂されていましたが、その2023年11月版をOECDのサイト上で見つけることができなかったため、その内容は取り入れられていません。
関連ページのURL
OECDのNewsroom
OECDのNewsroom(日本語版)
改訂版のAI原則
改訂版のAI原則(非公式日本語訳)
https://legalinstruments.oecd.org/api/download/?uri=/public/4bec282e-949e-4ef5-95fc-63b9b8694ee4.pdf
主な改訂内容
文言定義
定義変更:AI System, AI System Lifecycle, AI Knowledge (末尾にincluding managing risksが追加されたのみ)
定義変更なし:AI Actors, Stakeholders
AI原則
1.1 Inclusive growth, sustainable, development and well-being
環境サステナビリティも考慮対象に含むことを明記
1.2 Respect for the rule of law, human rights and democratic values, including fairness and privacy
タイトル変更(法の尊重、プライバシーの尊重、民主主義の尊重を追加)
誤情報や偽情報への対策が必要である旨明記
もともと想定していない目的での利用、また想定していない利用方法などによって生じるリスクについても対策が必要である旨を明記
1.3 Transparency and explainability
AIシステムに影響される者がその出力を理解できるようにするため、分かりやすい形での情報提供が望まれる旨を明記
1.4 Robustness, security and safety
AIシステムを安全に修復・停止できるような仕組みを整備しておくことの重要性を明記
表現の自由を尊重しつつ情報インテグリティを強化するための仕組みを整備すべきである旨を明記
1.5 Accountability
リスク対策は、AI Actor、AI Knowledge等の提供者、AI Systemの利用者、その他のStakeholdersとの協力を通じて実施すべき旨を明記
リスクには、有害なバイアスに加え、安全性、セキュリティ及びプライバシーなどの人権、労働者の権利、知的財産権に関連するリスクが含まれる旨を明記。
国家政策と国際協力
2.3 Shaping an enabling interoperable governance and policy environment for AI
柔軟性を持った結果ベース(Outcome-base)のアプローチを採用するとともに、相互運用可能なガバナンスと政策環境を促進すべきである旨の明記。
終わりに
二つのバージョンを細かく確認すると上記の他の箇所でも変更がありますが、その一言一句に言及するときりがないので、主な改訂内容のみ記載しています。詳細については各種資料をご確認いただければと思います。
なおOECDにおいては、AI原則が改訂されるだけでなく、広島AIプロセス・フレンズグループの立ち上げ、GPAIのアジアで初めての拠点となる東京センター新設、が発表されました。
またアメリカ - NISTもいくつかの動きがあり、AI Risk Management Frameworkの追加ドキュメントであるGen AI向けProfileのドラフト版が公開される等の動きがあり、追わなければいけない動きも多々… (日本はGWでも、欧米はそんなの関係ないですもんね…)