ニューヨーク州弁護士登録手続について(2023年, 非法曹, 日本から手続)
私は2021年夏から社費でLLM留学をし、卒業後の2022年7月にNY Bar Examを受験し合格しました。ニューヨーク州弁護士の登録手続きが煩雑で分かりづらく、苦労した部分がありましたので、これから登録される方の参考になればということでまとめたいと思います。
(特に日本の弁護士資格を持っていない方、日本から手続きをする方、指定された提出先が3rd Departmentの方はご確認頂けると良いかと思います。)
はじめに
登録手続きに関係する私の属性等をご紹介します。
・日本の弁護士資格は無し
・企業派遣でLLM留学
・Skills Competency RequirementはPathway 1、つまりロースクールの指定講義履修で充足(私が卒業したのはUCLA。その他にPennやGeorgetownがPathway1を満たす講義を提供していると聞いています。)
・Pro Bonoはロースクール卒業直後の2022年6月末に完了
・2022年12月にNYLEに合格したことで登録に必要な条件を全て充足し、2023年3月の日本帰国後に手続き開始
・私が指定された申請先は3rd Department
なお登録手続きの時系列は以下の通りです。(全て2023年)
・03/18: メールで住所変更通知(3rd Departmentの指定メールアドレスに送信)
・03/20: 住所変更通知受領の連絡(3rd Departmentから)
・04/01: 手続書面の概要確認、在日米国大使館の公証手続予約、書面準備、友人に推薦状の依頼、大学にCertification送付の依頼
・04/02: 大学に依頼
・04/06: 米国の大学から3rd Departmentに送付(3rd Departmentから確認メール受領)
・04/13: 日本の大学から3rd Departmentに送付(3rd Departmentから確認メール受領。入学時期と重なったため少し時間がかかった模様)
・05/02: 在日米国大使館で公証
・05/08: 推薦状が出揃ったため各書面を一つのPDFファイルに統合、メールで書面提出
・05/21: Registration Feeの支払いをしていなかったことに気付き支払い完了
・05/31: 3rd Departmentから宣誓式の連絡受領
ステップ0:BOLEの住所変更
日本に帰国した後から登録手続きを行う場合、最初にBOLEに登録している住所の変更を行う必要があります。
どうやって住所変更をするか、という手続きも指定された申請先がどこなのかと、住所変更をするタイミングがいつなのか(試験合格後なのか、受験後の結果待ちなのか等)によって異なるようですが、私は申請先が3rd Department / タイミングは全ての試験合格後であり、メールで3rd Departmentに通知する必要がありました。(BOLEサイトからの変更ではNGとのことでした。ご注意ください。)
私の場合は3rd Departmentにメールで通知し、その2日後にacknowledgedの返信がありました。
ステップ1:ブログ記事を確認する
まず最初に以下の二つのブログ記事をご確認ください。こちらのお二方の記事で手続きについてはほぼほぼ網羅できておりまして、私のこの記事の目的は、私の属性が理由でお二人とは少し異なっていた部分をご紹介することです。
そのため私の記事を読み進める前に、お二方の記事を読んで頂いて、もし解決できない箇所があれば私の記事の関連箇所もご覧いただく、というのが良いかと思います。
このように記録を残してくださったお二人には本当に感謝しております。ありがとうございます。
ステップ2:在日米国大使館の公証手続予約
2023年4月現在、提出書類のうち(私の場合は)Application for Admission Questionnaire(申請書)とPro Bono Affidavit(プロボノ要件に関する証明書)については公証(notarization)が必要でした。
日本で公証を受けようとすると在日米国大使館に出向く必要がありますので、日本で手続きを行う場合にはこれがボトルネックになる可能性が高いため、早めに予約することをオススメします。実際、私は4月1日に大使館の予約サイトにアクセスしたところ、最も早い予約可能枠が5月2日でした。
https://jp.usembassy.gov/ja/services-ja/appointment-system-acs-ja/
なお日本の公証役場で公証をしてもらうこともできるようですが、費用が米国大使館で実施する場合の3倍近くになること、また米国外の公証人による公証の場合は別途のCertificateが必要になること、から私は米国大使館での公証を選択しました。
また米国の公証人がオンラインで公証するサービスも出現しているようですが、これが問題なく認められるかどうかの不安が拭えなかったため、やはり念のため在日米国大使館に行くこととしました。
ステップ3:書類の準備
私が準備・提出した書類は以下の通りです。
(1) Notice of Certification (合格通知書)
Bar Examに合格するだけでなく、MPREとNYLEも合格すると受け取ることができる書面です。私はMPRE→NY Bar Exam(UBE)→NYLEの順で受験しましたので、NYLEの合格判明後に受領しました。
(2) Admission Questionnaire (申請書)
淡々と質問に答えていきます。私の場合は日本の法学部→企業の法務部→LLM留学という経歴でしたので、Q10のLaw Schoolの項目には日本の法学部とLLM留学した米国ロースクールの両方を記載しました。
また私の場合は日本(=NY州外)から手続きをしましたので、最終ページのADDENDUMも記載したうえで提出しました。そのため2ページ分の公証が必要になり、大使館の公証サービス費用は$50×2で合計$100かかりました。
(3) Good Moral Character Affirmations(友人からの推薦状)
2名から取得する必要がありますが、以下の通り制限が多く誰に書いてもらうかで悩みました。
2年以上前からの知り合いであること、現在の勤務先の関係者もNG、さらに弁護士が望ましい、といった記載もあり悩んだのですが、私は二人の学生時代からの友人(スタートアップでCOOを務めている友人+裁判所事務官を務めている友人)にお願いしました。二人とも弁護士ではなかったのですが特段問題にはなりませんでした。
なお、全ての記入を済ませた上でAdobe上の署名を行ってもらわないとエラーが表示されますので注意が必要です。そういったものに慣れていない(不安がある)場合は、Adobe上で内容を記入した後に印刷・手書き署名・スキャンしたファイルを使うのが良いかと思います。
(4) Law-related Employment Affirmations(雇用元からの推薦状)
私は新卒で入社した企業にずっとおりますので1通で済みました。さらに直属の上長が留学経験者かつニューヨーク州弁護士でしたので、記入もスムーズにご対応頂けました。(感謝!)
詳しくは冒頭で紹介したお二方の記事をご確認ください。
(5) Certificate of Good Standing and Grievance Letters(懲戒されていないことの証明書)
私は日本の弁護士資格を保有しておりませんので、こちらは提出しておりません。提出が必要な方は、冒頭でご紹介したお二方の記事をご確認ください。
(6) Pro Bono Requirement(プロボノに関する証明書)
こちらの書類は自らの署名について公証を受け、さらに監督弁護士からの署名も必要です。
私はオンラインオペレーターのPro Bonoに従事しまして、2022年6月末(NY Bar Exam直前)に50時間を満了しました。そのため米国滞在中に公証を受け、監督弁護士の署名を依頼しました。
この書面は全体で3ページあり、冒頭2ページは私が手書きで署名したうえで公証を受け、それをスキャンして監督弁護士にメールで送ったところ、3ページ目のみがメールで返送されてきました。つまり私の署名・公証済みの冒頭2ページと監督弁護士署名の3ページ目が別ファイルとなってしまいました。
この後に私自身でファイルの統合(編集)をしなければならず、監督弁護士署名後のファイルに私が手を加えてしまうことが手続き上問題ないか不安を感じていましたが、最終的には全ての申請書類を一つのPDFファイルに統合する必要があったため、編集したことが悪目立ちすることがなく、特段問題となることはありませんでした。
(7) Skills Competency Requirement(実務要件に関する証明書)
私はSkills Competency RequirementをPathway 1で充足しました。つまり米国ロースクールで指定された講義(私の場合はContract Drafting, Legal Negotiation等)を履修することで充足した形です。
なおこれを提供しているロースクールは限定的で、私が卒業したUCLAの他では、PennやGeorgetownが提供していると聞いています。もしPathway 1でこれを満たそうとする場合は進学先の大学を決めるときにもAdmissionに要確認です。
こちらのFormは申請者自身で一部を記入したうえで米国のロースクールに(8)のCertificationと併せてメールにて送付し、ロースクール側で必要事項を追記したうえで、メールで3rd Departmentに直接送ってもらう形としました。
(8) Law School Certificate(大学からの証明書)
(2)申請書のQ10に記載したロースクールについて、このCertificationを提出する必要があります。私の場合は日本のロースクールにも司法研修所にも行っていないため、日本の法学部と米国ロースクールの二つでした。
こちらも(7)と同様の手順で、申請者自身で記入する項目を記載し、PDF上の署名をしたうえで大学に送付し、大学側で必要項目を追記した後に3rd Departmentに直接メールで送ってもらう、という形になりました。
ステップ4:書類提出
ASAPさんの記事を読むと、提出先のDepartmentごとに提出方法も異なるようです。私が指定された3rd Departmentでは2020年以降はメールにて提出、という運用になっています。
そのため、3rd Departmentから指定された提出方法(一つのPDFファイルで提出すること)に沿うよう、準備した書類(1~6, 5を除く)をAdobe AcrobatでPDFポートフォリオとして作成し、3rd Departmentにメールで送付しました。(Adobe上の署名がなされているファイルが含まれると、ファイル結合をすることで署名が無効になりますので、ポートフォリオを使う必要があります。)
ステップ5:弁護士登録費用の支払い
ASAPさんの記事では登録申請後に案内メールが送られてくるとのことでしたが、私には送られてきたのは受領通知のメールのみでした。そのため失念していたのですが、以下の通り登録料の支払いが必要になるのでみなさまはお忘れなく…。ただし宣誓式の案内メールにも「まだの人は払ってね」という記載があったので、支払いは宣誓式の日付決定後でも問題ないと思われます。
その他の留意点
提出の方法
・指示では「PDFで一つのファイルで提出しろ」ということだったのですが、ファイル結合をすると署名が無効になるので、PDFポートフォリオを使うしかないと思いましたが、その点については明確なインストラクションがなかったので迷いました。結果的にはPDFポートフォリオで問題なかったので良かったですが。
・Skills Competency RequirementとLaw School Certificationについても、送付方法について明確なインストラクションがなかったので、大学から直接メールで良いのか迷いました。結果的にはその形でよかったのですが。
いつ手続きを開始するか
私は2022年12月末に必要条件を充足しましたが、すぐに手続きを開始せずに2023年3月上旬に帰国したのちに手続きを始めました。
理由としては、約2か月(12月末~3月上旬)では全ての手続きが完了しないと途中で住所変更を挟むことになり、米国の事務手続き・郵便システムの信頼度の低さから手続きがスムーズに進まないのではと懸念したためです。(あとは私の後回し癖によるところも大きい。)
ただ今から思えば早く手続きをしてしまえば公証ももっと楽にできたはずですので、帰国前に済ませればよかったかなと思います。後回しは良くないですね。
NY Bar 全体の進め方
各種試験を受ける時期としては以下がおすすめです。(ロースクール入学年をN年とする)
・N年 11月:MPRE
・N+1年 6月:Pro Bono終了
・N+1年 7月:NY Bar Exam(UBE)
・N+1年 8月/12月:NYLE
これはMPREで自分の適性(=択一対策にどのくらいの時間を掛ければどのくらいの点数が出るか)を確認しUBE対策の前提にできること、NYLEはUBE対策で得た連邦法の知識を前提に対策をした方が省エネで済むと考えられることからオススメです。
UBEの前にNYLEをやると連邦法の知識がないところからのスタートで連邦法+NY州法の両方を理解しなければいけませんが、後でNYLEを受けると連邦法と違う部分だけ理解していけばよいのでその意味で省エネで行けると思います。
またPro Bonoはロースクール在学中または卒業直後に50時間満たしてしまうことをお勧めします。理由としてはロースクール在学中の方が機会が多いことに尽きます。卒業後に日本で取り組もうと思うと、オンラインでできるものも枠が限られているなど、そもそもプロボノの機会を見つけることに苦戦することが考えられます。特に日本の弁護士資格を持っていない場合は機会が限られますので、早めに済ませてしまうことをおすすめします。
終わりに
煩雑な手続きですので誰かの参考になればと思いまして記事に書き残しました。少しでも誰かの参考になれば幸いです!