恋愛対象は5次元
鍼灸師ってすごくない?
鍼とお灸だけで、人のカラダを良くするんだよ。魔法遣いじゃん。いい人素晴らしい人代表じゃん。
父親はアル中。夜中に酔って帰ってきては家の中をぐちゃぐちゃにした。お母さんと取っ組み合いのけんかをして、警察を呼ぶこともままあった。
一番ひどい頃、中学生の兄しかそのけんかを止める人はいなくて。姉は小学生、私は幼稚園児。私はスヤスヤ眠っていて。その惨状をはっきり記憶していない。朝起きたら、家がひっくり返ったかと思うほど、散らかっていた記憶がおぼろげにあるくらい。
だから、お母さんは父親が嫌いだったし、兄が障がい者になったのも、父親のストレスからだと思っている。
兄は目の手術のため東京の病院に入院することになって、母親は新幹線で通院する生活が始まった。疲れる母、寂しい私。父親、姉、私での留守番生活で家の中はカップラーメンだらけ。
私は父親に甘えた。
って言っても、普通にじゃれついてただけだと思う。
それを姉は母親に言った。
「お母さんがいないとき、お父さんに甘えてるんだよ。」
そして母親は言った。
「あんたはどっちの味方なの。あんたこうもりみたいね。」
当時、こうもりの絵本があって。鳥界でも動物界でも両方にいいように言って、結局どっちにも嫌われるって話。
私は泣いて謝ったよ。お母さんの味方だよ。お父さんなんて嫌いだよ。
小学生はとっさに悟ったのだ。この世界で生きるには、女が善で男は悪。男に頼って生きてはならぬ。
小学生にしてこの概念を埋め込まれ、今の今まで遵守するという。。
大学を卒業して東京に就職。逃げるように実家を出た。私は新しい世界を創るんだ。おかしいのはこの家族だけ。
そうして、同じ会社の先輩を好きになった。そして、こっぴどく振られた。
新しく創造するはずだった外の世界も延長線上で。私大事にされないんだなって。
私は人間に飽き飽きした。
仕事がうまく行かないとアルコールに逃げて、家族に暴力をふるう父も。
自分の価値観がすべて正しいと意地でも圧力をかけ続ける母も。
ストレスを自傷行為で解消し、結局母に甘えるマザコン兄も。
家族から逃げて逃げて。自分の正しさを自分に押し付けて摂食障害。結局母に甘える姉も。
機嫌いい楽しいときは寄ってきて、都合悪く飽きてきたら、簡単に無視してぽいの我関せず男も。
誰も信じない。誰も愛さない。もう自分を傷つけない。
そんな中で現れた希望が、東洋医学だった。私は姿形のない概念に恋をした。