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正論は『今どき』に負ける

朝晩少し涼しくなって来たので、七五三の
お祝いをするご家族も増えて来ました。

昔ながらの七五三の意味と、本来の着物の形を
理解してオススメするお店で買う着物と、
着物に詳しくなくても動画を参考にすれば
それっぽく着付けられるように簡単に出来ている
レンタル着物には違いがあります。

どちらを取るか……今は圧倒的に後者です。
少なくとも私が出張着付けにお伺いする地域
では。

例えば三歳。

「髪置の儀(かみおきのぎ)」は
生まれた時に剃っていた髪を、数え年の
3歳まで男の子は髪を結うために伸ばし、
女の子は髪をきれいに伸ばすために整える
儀式です。


三歳で着る祝着は長襦袢+着物+兵児帯+被布。
長襦袢には刺繍付きの半衿を縫い付け、
着物と長襦袢には肩上げと腰上げを施します。

肩上げ:肩巾を折りたたんで縫って調整
腰上げ:着丈をおはしょりの形に縫って調整

(肩上げはお子様の手の長さ、腰上げはお子様の
裾までの長さに合わせて縫います)

着物にも長襦袢にも衿先に紐が付いているので、
誰でも簡単に着付けることができます。
そして浴衣の帯としても使える柔らかい兵児帯
を締めて、その上に「被布」という袖のない
上衣を着ます。

販売されている「三歳の祝着セット」には
兵児帯はついていません。
正しい装いを知る呉服屋さんは当然兵児帯も
勧めます。帯をしていれば、暑がって被布を
脱いでも着物の姿を保てますから。

ところがです。

レンタルで届く三歳セットには兵児帯が
入っていません。
ご家族はフルセットでのレンタルセットに
ない兵児帯は締めるものだという認識もない
わけですから「あれ?(兵児帯が)ない…」と
着付師が思ったところで、ないものは着せ
られないので、兵児帯なしで着付けるのが
今や主流です。

また、手の長さ(肩上げ)を着物と長襦袢両方
するのが手間だと思ったのか、数年前から
レンタルの七五三セットの長襦袢には袖が
なくなり、半襦袢になりました。
(肩上げも腰上げも必要なし)

いろいろ省略がひどい。

でもこれが今どき。
あまりしつこく兵児帯をすすめると、お店側が
逆に「売りつけられた」と受け止められ兼ね
ない世の中です。

正論、謂れ、歴史は何処に。

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