村で目指す人生の理想
____「狩猟採集が最終目標ですね」
雰囲気がよく似たお二人。
啓介さん、麻里さんは結婚を機に東成瀬村に引っ越して来られたご夫婦。
お二人が目指す理想の人生像とは…。
”幼い頃との変化”
今回は村を飛び出し増田町の与太郎さん(お寿司屋さん)にて取材。
与太郎さんの先代店主が啓介さんのお父様。
お父様のご実家は東成瀬村。
店内にはお父様の代から飾られている冬の東成瀬の写真がありました。
啓介さんのとって東成瀬村は昔からよく知る場所。
この場所に戻ってきたのは2年程前のことだそうで…。
____東成瀬村に移住を決めたきっかけはなんですか。
啓介さん:
「元々、山菜採り、家庭菜園などに興味があって自然の側で生活がしたいと考えていたので結婚を機にその暮らしに近い東成瀬に移住してきました。
東成瀬は幼い頃から馴染みのある場所だったのでどんな場所かもわかっていましたし、これからの生活イメージも描きやすかったです。
コンビニやスーパが近くて便利な生活は確かに魅力的なのかもしれませんがここにしかない良さが存在していると思います。」
___自然が好きな人にとってここはたまらない空間ですよね。
啓介さんにとって東成瀬村は、幼い頃から知る場所とのことですが
実際に移住されて昔と変わったなと実感することは何かありましたか?
啓介さん:
「どこの場所にも共通するかもしれないですが人口減少、高齢化は身に染みて実感しました。
若い人が本当に少ない。肌で実感する怖さや不安もありました。
核家族で生活する難しさや雪の多さは人口減少の要因のように感じます。」
___その変化を実際に体感するとこれまでにない危機感を感じますよね。
麻里さん:
「だからこそご近所付き合いはとても貴重なものに感じます。
挨拶を交わすのはもちろん、色んなおすそ分けをいただいたりして
昔ながらのご近所付き合いを経験しています。
普段から交流を持っていれば何か困った時にお互い声を掛けやすいですし、
ちょっとした変化に気づくこともできると思います。」
___この村は面倒見のいい方ばかりですよね。
お互いが支え合いを大事にしているから生まれる思いやりの心ですね。
麻里さん:
「こんなにも安心して子育てができる環境は他にはないと思います。
血のつながりがなくても子供を見守ってくれるおじいちゃん、おばあちゃんが沢山いるので子供にとっても親にとっても恵まれた環境で子育てもできるんじゃないかなと思います。」
___幼い頃に家族以外の大人とより多く触れることはとても大切なことだと思います。
村としても子育て支援にはかなり力を入れて取り組んでいますし、
学力日本一の村としてメディアでも取り上げてもらったりもしますよね。
”世代を超えた繋がり”
啓介さん:
「ただ、世代を超えた交流はあまり盛んではないと感じますね。
山の事、川の事や、山菜の食べ方…。
そういった事を教えてもらえる機会が欲しいなと思います。
様々な技術や経験を残したい世代とこれからのために教えて欲しい世代を
つなぐ機会は必要だと感じています。」
麻里さん:
「そういう場所を協力隊の方々にはぜひ作ってもらいたいです。
これまでは動き出しづらかった村の方も外部からの力を借りることで
スピーディーかつエネルギッシュな動きができるようになり、世代を超えたコミュニケーションが盛んになると思います。」
このお話はこれまでの私ができなかった気づきを作ってくれた。
どこかに感じていた「よそ者」という印象。これをどうにか払拭したい。
そんな思いでもがいてきたが、外部の視点として見るもの感じるものを大切にしなければならないと教えていただいた瞬間だった。
”移住者だからわかること”
東成瀬村は自然が好きな方や自分で畑や田んぼに挑戦したいという人に
とっては優れた場所。それでも移住・定住率は低いこの村。
移住者にとっての壁となる要因はどんなものか。
冨田さんご夫婦にもお伺いしてみた。
啓介さん:
「冬の間の雪はかなりネックになっていると思います。
東成瀬に住んでいたら、隣の増田や横手市の雪は少なく感じるくらいですから、住み続けるとなるとやはりハードルは高いのかもしれません。」
___高齢になった方、子育て世代の方は少しでも雪が少ない場所にと近くの町に移り住むなんて話もよく聞きます。
日中お仕事されてる方は出勤前も帰宅後も雪かきに追われると思うと
やはり大変だなと思います。
麻里さん:
「それに車が必須というのは負担に感じる方も多いかもしれません。
例えば、移住者向け、高齢者向けに車をシェアするサービスがあったりすると非常に便利かなと思います。
あと、畑付き一軒家を移住者向けの方に貸し出すとか。
そういうのが制度としてあったらすごく魅力的だし、移住を考えている人にとってはチャレンジしやすい環境になると思います。」
___移住者を増やすという点での取り組み方はこれから個人的にも勉強していかなければならないと感じています。いろんな意見を聞くためにも移住者同士、村民同士の話し合いの場は必須だと思います。
”冨田さんご夫婦の今後の理想”
___冨田さんご夫婦の東成瀬の暮らしでの今後の目標や理想などは
ありますか?
啓介さん:
「自分たちの田んぼや畑、山や川で採れたものを食べる。
衣食住全てが自分たちで賄える暮らしになったら凄い事だなと思います
狩猟採集が最終目標です。
またこうした場所で生活しているからこそ環境について考える機会も自然と増えていますね。
環境にも優しい形で釣りをできないかと思いナイロンではなく麻糸を使って釣りにチャレンジしたりもしてます。
楽しみながら自然に向き合うことができて充実しています」
___山や川といつも隣り合わせな村だからこそ自然と向き合うきっかけは増えますよね。自分も楽しみながら、環境について考えられるというのは東成瀬村の新たな魅力になると思います。
麻里さん:
「仕事が生活の全てというよりも、仕事以外の日常生活がより充実していて
なおかつ、仕事に行っても楽しいというような自分のライフスタイルに合わせた働き方ができることが理想ですね。
今働いてる職場はまさしくそのバランスがとれた最高の職場だと思います。
今の職場は働く方の多くは定年退職された主婦層の方々です。
例えば、病院に受診するので遅くなるとか孫が熱を上げてしまって急遽早く帰らなければいけないとかそれぞれの事情をよく理解しながら仕事ができています。
ゆいっこ精神というのでしょうか。お互いを尊重し合う気持ちが強い温かい職場です。
今は年齢層が限定的ですが、今後は子育てや移住してきた方がちょっと働きたいなという時に働ける場所になったら嬉しいと考えています。
私自身も加工場で働くようになってから村でのコミュニュケーションの幅が広がったなと感じています」
____以前麻里さんの職場にお邪魔させていただいたときに感じた
あの優しい空気は皆さんのそういった気遣いから生まれているものなんですね。
今回の取材で新たに感じた協力隊としての課題。
幼い頃から東成瀬村をよく知る啓介さん、村で働く麻里さん。
このお二人だからこその視点に私自身も様々な気づきを頂いた
時間と空間に縛られない働き方が求められる現代。
冨田さん夫婦のように自分らしい暮らし方を求めている方にとって
この場所は唯一無二の場所になれると実感した。
そしてそんな人が一歩踏みだすきっかけを作れるよう
サポートするのもまた協力隊の役目であり、使命だと思う。