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. 「この世につまらない本は一冊もない。」どんな本でも何かしら自分の糧になるものに気付…

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. 「この世につまらない本は一冊もない。」どんな本でも何かしら自分の糧になるものに気付かされると思って日々読書。年約300冊。新刊~昔の中古本まで恋愛物、ホラー、サスペンス、残虐物、ファンタジー、あったか系幅広く短い文でどんな本かを作家さんにも触れながらネタバレなしの感想。

最近の記事

「グロテスク」桐野夏生 圧倒的な負の重圧

一体何を読まされているのだろう… と言うのが読みながら常に付きまとった感想。 まさに全部がグロテスク。 出て来る人達、行動、考え方、起こった出来事…グロテスクな様相が、計り知れないほどに溢れかえっている。 2段な上に540ページ。 1人語りを切々と綴る果てには、何があるのだろう…と最初は我慢の読書だったが、次第に桐野世界に惹き込まれ、囚われの身になったように気分に。 グロさや、危ない表現、そして暴行や恐喝や殺人…。 エネルギーがないと読めないし、エネルギーをかなり吸い取

    • 「らんたん」柚木麻子壮大なる女性大河小説

      ーらんたんー その灯火を決して消さぬよう絶やさぬよう、その為に必死に生きる。 必死に日本中世界中を駆け回り、その果てには素晴らしき風景がとめどなく拡がって行く。 未来の為に。 構想5年。 果てしなく続く関連資料からもうかがえる、柚木さんが懇親込めた女性大河小説。 アッコちゃんシリーズや、女子間の微妙な感情を面白可笑しく描くいつもの柚木さんではない。 重く苦しく、ぎっしりと詰まった文字の中には、明治から昭和までー背景には関東大震災、第二次世界大戦を従え、そんな中を堂々と生き抜

      • 「タラント」角田光代自分の存在価値は…

        . この心中を、どう表せばこの本の凄さを伝えられるのだろうか。 久々だった角田さんは、やはり私にとっては最高の作家さんだ。 誰も踏み込まないような観点からの問題作品だった。 考えたい事柄が詰まりすぎてる。 戦争、パラリンピック、偽善と善悪、コロナ…中でも自分の存在価値。 たぶん誰もが思うであろう、行動を起こして失敗のリスクをためらう気持ち。 そこを踏み越えることへの価値。 自分はどちら側に立つべきなのか。 生きている上で、毎日をこなすだけで深く考えていなかった、心の底

        • ルミネッセンス 窪美澄切なくギリギリを生きる者達の本心は…

          人の本音を著すのなら、明るい表現より、暗く深淵を這うような表現である方が真実味があるように感じられる。 団地を中心として育まれた仲間内での、それぞれの生き方考え方を、5編連作で綴る。 表面的には分からない人間の本心を、鋭く描く美澄さん。 もう容赦なくギリギリまで危ない暗さで走る文体に、美澄さんらしさをくらくらとするほど感じられた。 鋭く光る心の声があまりにも切なくて何度も心が引っ張られた。 ルミネッセンス…… 他からの力、エネルギーによりそれを元に発する光。 人はひ

        「グロテスク」桐野夏生 圧倒的な負の重圧

          「錦繍」宮本輝 極上の愛にあふれた書簡小説

          時々読むこの書簡体小説は、もう昔の本でしかなかなか見られないのだろうか。 淡々と進む感じと、整頓された文体で読みやすく、とても好きだ。 離婚した元夫婦が昔を振り返りながら、その時その時の真実であったり、心の模様や、相手に対する気持ちなどを著したり、また未来へと続く発展的な方向性も見られて、清々しい作品だった。 悲惨な事件や、浮気、殺人など結構な過激さが綴られながらも、手紙という形式であるがゆえに、静けさと心を鎮める穏やかさに包まれている。 読み手側に押し付けることなく

          「錦繍」宮本輝 極上の愛にあふれた書簡小説

          「山ぎは少し明かりて」 辻堂ゆめ 3世代に渡るダムを巡った大河小説

          大好きな辻堂さんの大河小説、と言われたらあの名作「十の輪をくぐる」を思い出してしまう。 こちらは親子3世代を綴った、スケール大きいダムに沈む村を巡っての物語。 世代ごとに章が別れるが、端的過ぎて最初は掴めない感じでもどかしいのだが、この順番でいかないと最後の種明かしみたいなものが生きてこない。 さずが、とても考えられた構成。 しかし最後の章が中心となるのでボリュームが多く、仕方ないことだが全体を見通すと、ちょっとバランス的に均等さにかけるところがスキッとしない感が残る。

          「山ぎは少し明かりて」 辻堂ゆめ 3世代に渡るダムを巡った大河小説