価値観が変わる!シードル屋さんの農業体験レポート~りんご農業のいま~
はじめに
こんにちは、ミチルシードルのさてぃです。(ミチルシードルは、自然の恵みが詰まったクラフトシードルを詰め合わせでお届けするサービスです)
9月某日、長野県立科町にある「たてしなップルワイナリー」様(以下「たてしなップル」)の畑で、りんごの葉摘みと収穫の体験をさせていただきました。
農業が大変な仕事であることは感覚的に理解していましたが、実際に体験するとそれは想像をはるかに超えるものでした。
りんご一つを収穫するための苦労を知り、スーパーに並ぶりんごを見る目が変わりました。この価値観が変わる体験を多くの方に届けたいと思い記事を書かせていただきました。
たてしなップルについて
今回、農業体験をさせていただいた「たてしなップル」がある立科町の牛鹿地区(うしろくと読みます)は、目の前に田んぼとりんご畑が広がり、その先に浅間山や蓼科山が一望できるのどかな農村です。
「たてしなップル」はこの土地で、りんごやぶどうなどの果実の栽培から、ワイン、シードルの醸造、販売までを一気通貫で行っている会社です。
フラッグシップの「フェルミエ」はカラメルのようなコクが特徴のシードルです。食中酒としても楽しめますが、チョコレートやあんこなどのスイーツにも合うので是非お試しください。
りんご畑で農業体験をするに至った背景
国内のりんごを取り巻く環境は生産者、消費者ともに減少傾向にあります。そんな中、長野や青森などのりんごの産地ではクラフトシードルでりんごの価値を高めようという動きが高まっています。
私たちは、クラフトシードルの魅力を多くの方に知っていただくことで、りんご農業の活性化に貢献したいと考え2023年7月にクラフトシードルの販売サービス「ミチルシードル」を立ち上げました。
(今回ご紹介したたてしなップルのフェルミエもミチルシードル「はじめてのシードルセット」でご購入いただけます)
「ミチルシードル」の立ち上げからさかのぼること1年半前、私たちは、情報収集のため「たてしなップル」を訪ねました。そこで支配人の市川大樹さんから〝農家の高齢化〟〝耕作放棄地の拡大〟〝農業現場の人手不足〟といった農業現場の課題をお聞きし「自分たちにも何かできることはないか?」という強い思いがわき上がってきました。
そこで、まずは自分の肌でその実態に触れる必要があると考え、市川さんにお願いして収穫の体験をさせていただくに至りました。
次のコラムでは実際に行った作業についてご報告します。
りんご農業実践 葉摘み編
りんごの収穫時期が近付くと、色づきをよくするために、果実の周りにある葉っぱを摘み落として日当たりを良くする作業を行います。
当然ですが、葉摘みは一枚一枚手作業で行います。想像してみて下さい。今回訪問した「たてしなップル」の畑には1200本近いりんごの木があるそうですが、その果実一つ一つを観察して葉っぱを摘んでいくのです。地道で膨大な作業であることがわかると思います。
さらに、葉っぱの周りには花芽があります。これを傷つけたり、摘んでしまうと来年の収穫量に影響が出てしまいます。つまり、手間がかかる上に繊細な作業なのです。
りんご農業実践 収穫編
私が訪問した9月後半は「千秋」という品種の収穫時期でした。
これも果実ひとつひとつを観察しながら、全体に色づき、食べごろになったりんごだけを収穫します。
ここでも繊細な作業が要求されるのですが、一つは、果実に軸をつけた状態で収穫しなければならないということです。軸とはりんごの頭からぴょんと出ている枝のことです。これがないと商品価値がなくなってしまうのだそうです。
そして、もう一つは「玉まわし」です。「もう十分に色づいたかな?」と見えるりんごでも、枝の陰になっている部分が色づいていなかったりするのです。優しく回して、陰になっている部分に日が当たるようにするのです。
またまた、想像してください。この作業を1200本の木になった果実ひとつひとつに対して行うのです。そして、この果てのない繊細な手作業は収穫期だけの話ではありません。開花の時期に行う摘花、受粉。初夏に未完熟の果実を間引く摘果など、一年を通じて繰り返されるのです。
ここまで、りんご一つを収穫するための手作業の多さを述べてきましたが、農家さんにとって本当に大変なのは自然とのたたかいかもしれません。次のコラムでは自然がもたらす農家さんへの影響について報告します。
気候変動とりんご農業
近年の天候不順はりんご農業に深刻な影響を与えています。今回訪問した立科町では、3月に急に気温が上がって開花したところに、4月に遅霜が発生し、本来果実になるはずの花が枯れてしまう被害が発生しました。この凍害による同町の果樹被害額は1億5316万円といわれています。りんご一個150円とすると100万個以上が被害で収穫できなくなったことになります。
さらに、夏の日照りにより日焼けした果実は色づきが悪く、食味にも影響を与えるとのこと。
また、下の写真のように実がぱっくり割れているりんごも見かけました。これは、水不足で果実が十分に成長していないところに、ゲリラ豪雨のような急激な雨が降ることで果実が破裂してしまうそうです。
下の写真は私が1時間程度の作業で収穫したりんごです。およそ2カゴ分ありますが、この中にも鳥害、病気、軸が取れてしまったもの(ごめんなさい)があるので、出荷できるのは半分以下になるのではないかと思います。
おわりに
私たちがスーパーで何気なく目にしているりんごですが、棚に並ぶまでに過酷な自然とのたたかいを制してきているということ。そして果実ひとつひとつに農家さんの思いが込められていることを知りました。
農業をめぐる様々な課題に具体的な答えはまだ出ていません。ただ、まずは、私が体験した農業の現状を一人でも多くの方に届けたいと思い記事を書きました。地道ではありますが、大きなうねりをつくるための一歩を歩み続けていこうと思います。
最後になりますが、今回お世話になったたてしなップルの市川さん、春原さん、竹内さん、田中さんありがとうございました。