去年読んで良かったSF小説の話
※ネタバレはありません。
僕はSF小説が好きです。去年は良質なSF小説が大量に発表されましたね。特に中国SFの台頭が凄まじい。(というよりようやくその流れが日本にやってきたという感じ。なんで中国SFが凄いのかとか、今SF小説を読む理由とかでもnote1本書けますが、とりあえず去年読んで良かったSF小説の振り返りでもしようと思います。(何回振り返るんだろう。)ちなみに、少し前に小説を読もうよ的なnoteを挙げましたが読むならSF小説が一番コスパが良いです。好むと好まざるとは置いといて。
紹介始め。
1. 三体
去年読んだ小説の中でも、いやここ数年の間に読んだ小説の中でも群を抜いて面白かった。内容はタイトルにもあるように三体問題をベースとしたハードSF。三体問題に限らず、仮想現実・量子理論を始め最新の科学知識がふんだんに盛り込まれている。作者は中国人の劉慈欣。彼の小説以外の文章を読んでも彼がいかに人類の未来を深く洞察しているかが分かる。今SF業界を牽引している時の人と言っても良い。ちなみに「三体」は三部作で、去年その第一作がやっと邦訳された。第二作は今年邦訳予定とのこと。僕は待てなかったので英訳バージョンを読みました。
2. 折りたたみ北京
これまた中国SF。ただ内容はアンソロジーなので読みやすい。最新の中国SFに触れることが出来るのでオススメ。多分この本から日本でも中国SFが認知されるようになったのでは。内容は、幅広いので気に入った短編を読むだけでも良し。
中国SFについて続けたので、何故今中国SFがアツいのかさらっと考察してみます。中国といえば社会主義(共産主義)、これは極論かもしれませんがディストピアと相性が良いんですよね。そしてディストピアと言えばSF。「折りたたみ北京」の「沈黙都市/馬伯庸」はまさにその世界観。最高です。永い中国の歴史の中で集積されてきた人々の抑圧された感情が昨今の中国の目覚ましい科学技術進化と結びつき、SF小説という形で昇華されたのではないでしょうか。
紹介に戻ります。続いて日本SF。
3. アステリズムに花束を
こちらもSFアンソロジーなので読みやすい。紹介文に「百合SF」と書いており、表紙の絵柄も可愛らしい。日本らしくて微笑ましい。ただ、内容はなかなかにハードなので読み応えはあり。百合要素は薄い。
4. 最後にして最初のアイドル
「アステリズムに花束を」にも寄稿している草野原々さんの作品。ちなみにジャンルは「実存主義的ワイドスクリーン百合バロックプロレタリアートアイドルハードSF」という仰々しいもの。読めばなるほどね、となるが、日本のSFはこの方向に進んで行くのか。という新たな道標を示してくれる作品。ラノベのような可愛らしい表紙と内容の落差が最高。
5. なめらかな世界とその敵
これも「アステリズムに花束を」に寄稿している伴名練さんの短編集。内容は骨太ですが、SFに対する愛が非常に溢れている。過去のSF作品に詳しいと作者のリスペクトが感じられてより楽しめる。伊藤計畫さんの作品が聖書になってて笑った。
6. 息吹
これは海外SF。テッドチャンによるSF短編集。ここまでに挙げたSF小説とは少し毛色が違う。どういうことかというと、非常に人間に寄り添っている。ここまで人類愛に満ちたSF小説は初めて読んだ。往々にしてSFは新しい世界を見せてくれますが、人間とSFとの関係性をここまで深く洞察した小説はなかったのでは。
以上。長くなったので終わります。今年も中国SFの台頭に注目ですね。また、日本勢としては伊藤計畫を超えるポスト伊藤計畫が現れることを期待しています。
今年も沢山SF小説読みたいですね。