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精神科医にも心はある。

 昔、ベテランの女性精神科医さんがおられるクリニックに通っていました。ご高齢でしたが強靭な精神、所謂、鋼のメンタルをお持ちだと考えていました。

 はっきりと物を仰る。
 漢方医の難関な試験も受けて合格された、勤勉で聡明な方でした。

 怪我をした鴉を旦那さんが拾って世話をしている、などの話を笑って語っておられるのを聴いて、ご夫婦仲が良いのだなと思っていました。

 ある日、その先生から簡潔に旦那さんが亡くなられたと伺いました。

 短く乾いた口調で告げた後、先生が私から顔を背けた時。

 何も言われたくないのだ、と察しました。
 お悔やみの言葉さえ、痛む傷はあります。

 とにかく刺激されたくないという傷は。

 だから何も言いませんでした。
 沈黙することが最善だと、その時、感じたからです。

 どんな御職業の方であれ、心ある人間なのだと思っています。
 心を忘れたり失くしたりしてしまうこともありますが。




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