あまみさんという友人の話
あまみさん、というのは彼女のペンネームです。
奄美大島出身だから、あまみさん。
知り合ったのはもうかなり昔。
まだXさんがツイッターさんだった頃、物書き仲間というご縁を通じて親しくさせて頂きました。
彼女のほうが私よりもお姉さんで、お人柄が反映された素敵な物語は小説投稿サイトでも人気がありました。年齢においても執筆歴においても、あまみさんのほうが私よりも先輩にあたります。
けれど、少しも先輩風を吹かすことのない、本当に優しい人でした。
私の作品をとても評価してくださり。親しく交流させて頂いていたのです。
ある日、あまみさんから自分の作品を私の手で新しく蘇らせて欲しい、と頼まれました。
非常に驚きました。
確かに、文筆業界においてそうした例はあるだろう。
しかし、あまみさんの作品に私が手を入れたら、元々の作品、本来の魅力が損なわれてしまうのではないか。
そのように危惧もしましたので。
あまみさんは人のお願いを受け容れることの多い方でしたが、その逆の例を私は知りません。
ですから、先に記したような危惧はあったものの、彼女からの頼みに、私はひとまず頷きました。
それから程なくして、あまみさんは体調不良というご事情により、ツイッターさんを退会されました。
その後も彼女との個人的な遣り取りは続き、あまみさんの腎臓がお悪いということ、人工透析の必要性などのお話も伺いました。
私は、彼女がご自分の作品を私に託そうと考えられたのは、そうした経緯ゆえかとも密かに考えていました。
才能に恵まれ、惜しみなく人に与える。
虚飾とは一切無縁。
そんな人でした。
今回の画像に置きましたコートとワンピースは、どちらも、あまみさんがデザイン・作製された物です。とても大切で貴重な品でしょうに、「朋ちゃんにあげる」と言って、お手製の栗の渋皮煮などと一緒に送られて来ました。
モンゴメリ『青い城』という作品の存在を私に教えて、そちらの本もくださいました。『赤毛のアン』の他にも、モンゴメリは素晴らしい作品を書いていたのだということを、私はお蔭で知ることが出来たのです。
細々とした交流が、やがて途絶えました。
心配していたところ、彼女から久し振りに来た連絡の内容。
やはり、人工透析を受けなければならないようで悔しい。
九州大学の大学病院で、その前に検査をするから逢いたい。
そうしたものでした。
しかし、検査を受けると知らされていた日程を過ぎても彼女からは音沙汰がありません。
私は私の事情により、当時住んでいた福岡を離れることとなりましたので、あまみさんが今、どのようにお過ごしなのかを存じ上げません。
私の周りにいる優しい人たちは、なぜかお身体が丈夫ではないことが多い。
悲しいです。
逢えなくても、あまみさんがこの世界のどこかで今もご無事に生きておられることを祈っています。
彼女から託された作品は「小説家になろう」さんに今もあります。
『ガラスの植物園〜竜の眠る街〜』という作品で、正式なペンネームは森嶋あまみさん。
私はこの作品の序盤を拝読しましたが、とても手を着ける気になれませんでした。
そのままで素晴らしい作品だと思ったからです。書き手であるあまみさんの優しく素敵なお人柄があってこそ、紡がれる世界。私が何がしか、そこに手を加えたら、作品世界が全く別物となってしまう。
そのことを惜しみました。
彼女からされた唯一の頼み事を、私は未だ果たせずにいます。