亡命者の古書店: 続・私のイギリス物語 (新潮文庫)
佐藤優さんの英国留学時代を描いた自伝的小説。
イギリスでは、佐藤さんは英国陸軍の語学学校でロシア語を勉強していた。
学生時代から神学研究の本を探しに、休日には、趣味の旧東側で出版されていた神学者の本を買いに古書店に行っていた。
なぜ西側で東側の本が手に入ったのかというと、東側の重要な外貨入手手段となっていたから。その古書店は、BBCのチェコ語放送を行っていた亡命チェコ人マストニークさんにより経営されていて、佐藤さんはこの人をメンターとして、東側諸国(ロシア、チェコスロバキア)の文化や哲学を学んでいくという物語である。
「恐らく、われわれはヨーロッパでもっとも外国語に堪能な民族だと思います。それは、世界で起きているいろいろなことを知らないと生き残ることができないという強迫観念がチェコ人に強いからです。しかし、いくら知識を増やしても、われわれは安心することができない。それは根源的なところでチェコ人が何も信じていないからです。チェコ人は神を信じていないが、共産主義も信じていない。根源的に懐疑論者です」
このメンターがいなければ、佐藤さんのその後の活躍もなかったのかもしれない。