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下肢閉塞性動脈硬化症になった話
個人的な記録ですが、今回自分に起こったことをネットで調べる中で、スポーツをしている人の下肢閉塞性動脈硬化症に関する情報があまり得られなかったこともあり、同じような症状の方に少しでも参考になることがあればと思い、残しておくことにします。
趣味でロードバイクに乗り始めて10年以上、大好きなヒルクライムを楽しんだり、ロングライドをしたり、レースに参加したり、ここ数年は年間走行距離が15,000kmくらいの40代ホビーライダー。
その間、大きな怪我や不調もなく過ごしてきました。
直前に体調を崩したものの(発熱はあったが抗原検査は陰性)自己ベストを更新することができた乗鞍ヒルクライムを終え、しばらくのんびりモードでいこうと思っていた2023年の秋頃から、高強度で走ろうとすると15分くらいで左脚に乳酸が溜まりそれ以上強度を保てない状態が続くようになりました。
元々左右差はあったもののここまで顕著に左脚だけ回せなくなるというのは記憶になく、乗鞍は気持ちよく走れただけに少し気になったけれど、燃え尽き症候群みたいな感じで身体と気持ちのスイッチが切れてるのかな、とその時点ではあまり深刻には捉えていませんでした。
スタッフ兼ゲストライダーとして参加する浜名湖での自転車イベントに向けて準備を進めていた11月上旬、花粉の影響かまたしても体調を崩してしまいます。
丈夫なだけが取り柄だと思っていたので少し落ち込みました。
一週間もしないうちに体調は戻ったのですが、11月9日に走行会で40kmほど走ったあとから今まで経験したことのない脚の痛みを感じました。
走り終わってからも、脚の酸欠状態が続いている感じで締めつけられるような痛みがおさまらず、とにかくこれまでにない状態。
翌日以降は普段の生活では痛みはないものの、自転車はまったく強度を上げられず、いつものペースで走ろうとするとすぐに乳酸でパンパンになったような状態が続き、まともに走ることができませんでした。
イベント二日間はどうにか無事に走り終えたものの、日に日に走れなくなっていくことに不安を覚え、病院を受診することにしました。
最初は坐骨神経痛を疑って整形外科を受診。
レントゲンを撮ってもらい、反り腰からくる坐骨神経痛、と診断されました。
念のため血液検査もお願いしていましたが、そちらは特に問題なしとのこと。
ただ、鼠径部で脈がとれないことに直前で気づき、ネットで調べて症状が似ていた動脈硬化の可能性を知るために脚の血圧を測ってほしいとお願いしました。
すると、左脚の血圧が測定不能という状態。
これっておかしくないのかな、と思いましたが、医師からは血液検査の結果から見ても年齢的にも動脈硬化はない、とその後もリハビリしか勧められず、二度通院しましたが改善が見込めないと判断して、セカンドオピニオンを求め別の病院へ。
この頃には、普段の歩行でも痛みが出たり、階段を上った直後は脚がパンパンだったりと、日常生活でもやや影響が出るようになってきました。
サイクリストに見られる外腸骨動脈内線維化症も疑ってみましたが、詳しく記載してくれている方の文章を参照してみると少し症状が異なる様子。
二軒目の病院では血圧測定(ABI検査)の結果、数値が著しく低いので今すぐ循環器内科を受診した方がいいと紹介状を出してくれ、急いで総合病院へ行くことになりました。
翌日、病院でCTを撮ってわかったことは、左外腸骨動脈が血栓で詰まっているということ。
次は家族と来てください、と言われ、物心ついてからは手術も入院も経験がないので一体どうなるんだろうかとぐるぐる不安になりながら、ものすごい種類の血液検査をして次回の診察を待つことになりました。
年が明けて1月5日、血液検査の結果はまったく問題なし、該当箇所以外の血管はツルツル、生活習慣からもその要素はないから原因は特定できないけれど、運悪く(というのが医師の表現でした)血栓ができており、それが血管を塞いでしまっているということで、病名は下肢閉塞性動脈硬化症と診断され、左橈骨動脈(手首の辺り)からカテーテルを通し左外腸骨動脈の血管が狭くなっている箇所にステントを置くという手術を受けることになりました。
ステントというのは金属製の筒状の網で、これを血管内に置くことで狭くなっている血管を広げたまま保持することができるそうです。
血管が拡張すればこれまでどおりに激しい運動をしても大丈夫、と言われ、色々不安なこともありましたが、今まで以上の実力を発揮できるように、という医師の言葉が心強かったです。
手術当日、今年一番の寒さだったためやたらと大荷物を背負って入院するも、結果的に病室は暖房がよく効いていて、持っていった上着やウォーマー類は使うこともなく、移動時以外は寒さを感じることなく過ごせました。
荷物を置く場所は扉付きの小ぶりな三段ラックがあり、大荷物でも十分収まるサイズでした。
午後からの手術なのでお昼ごはんは食べられず...。
病室で色々な説明を受けて手術着に着替え、点滴などの準備を済ませ、車椅子に乗せられ手術室へ向かいます。
手術室には想像以上に人がいて(8人くらい?)やや怯みますが、動揺するひまもなく手術台に上がり(思った以上に高くて狭かった)、心電図の電極を貼り付けカテーテルを入れる箇所を消毒、局所麻酔のため意識ははっきりあって、手首の付近からぐいぐい入っていく感触もなんとなくわかるのでなんだか変な気分でした。
そして、思ったより痛い(笑)
基本的には麻酔が効いているので痛みはないはずなのですが、ぐいっと動かした瞬間などは結構ズンとした鈍痛があり、なるほどこういうものかと妙に納得しました。
もし届かない場合は鼠径部の辺りからもカテーテルを入れることになると言われていましたが、手首からのカテーテルだけで無事患部に到達し、血栓が飛ばないように大腿部を圧迫して(20分くらい?これが結構きつかった)10×80mmと10×60mmのステントを留置、ジャズが流れる中での手術は結局2時間弱で終了しました。
再び車椅子に乗って病室へ戻り、30分はベッドで絶対安静、その後3時間半はトイレ洗面への移動はOKになりましたが、点滴は結局20時過ぎまで繋がっていて、慣れない移動が難しかったです。
ジンジンするような手首の鈍い痛みと造影剤の影響なのか頭痛はあるものの、消灯直前に様子を見に来てくれた医師からカテーテルを通した周辺に皮下出血が少し見られるけど概ね問題なしと言ってもらい一安心しました。
夜は病棟に鳴り響くアラームと熱を持っている手首と暖かすぎる空調のせいで眠りが浅く、ついでに腰も痛くなってきてほとんど寝た気がせず...。
朝は7時頃に採血、9時前に回診があり、医師から状態は良好で血液検査も問題なしとお墨付きをいただき無事退院することができました。
たった一泊二日の入院でしたが、初めてのことだらけで緊張しっぱなしだったのか、家についたときの安心感は半端なかったです。
階段を上っても脚が痛くならないことに感動し、すぐに運動を始めてOKと言われていたので翌日ローラーを試してみたところ、脚の痛みはまったくなし!
ただし、皮下出血でまだ少し腫れている手首は体重をかけたせいか痛くなりましたが(笑)
心肺機能がめちゃくちゃ落ちているので、当分はリハビリペースですが、痛みの不安なく自転車に乗れることがこんなに幸せなのだと改めて気づけました。
唯一気がかりなのは血栓ができた原因がわからないことだけれど、病気に限らずわからないことはたくさんあるんだろうし、あまり気に病んでも仕方がないのでこれまでどおりを続けていこうかと。
本当にたくさんの人たちのおかげでまたスタートできることに心から感謝して、今まで以上に楽しく走れたらいいなと思います。
健康第一!