星が泣いた(詩のような短編小説)
ふと、
目を開けると、
横にいた君が泣いていた。
「なんで泣いてるの?」
と僕が君に聞くと、
「星が泣いてるから」
と言う。
僕は、
真夜中の空を見上げる。
星はきらきらと輝いていて、
どれが泣いているのかわからなかった。
「どれ?」
「あなたは聞こえないの?」
僕は耳をすます。
夏の蝉はもう鳴き声を上げなくて、
ただ、
星は綺麗で。
「なぜ、泣いているの?」
と僕が言うと、
「わからない。ただ、私のところに来て、と泣いている」
と君は言う。
まつ毛のマスカラが濡れて黒くなっていた。
わたし、行くわ
どこに?
空に。
僕は首を傾げる。
きみがいなくなると、
僕は泣くよ。
あなたにはいるじゃない。
だれのこと?
友達。私には星がいるの。
行かないでよ。
私は、ここに、もう戻れないの。だから手を離して。
じゃあ、僕もつれていって。
駄目よ。地球を離れるのは、わたしだけでいいの。
晩夏の空を眺める。
星々はきらめいていて、どれが彼女を呼んでいるのか分からない。
愛してる。
私もよ。
僕は彼女の手を離した。
彼女は手のひらで、そっと目元を拭った。
ねえ。僕のこと、覚えていてよ。
大丈夫よ。私は100年後も貴方のことを眺めているわ。じゃあ、さよなら。
僕は泣いていた。
さよなら。
彼女はふわりと地面を蹴って、空へと飛びあがっていった。
ねえ。
君はどれかな。
僕の思いは届くのかな。
僕は君を愛している。
いつまでも。
おじいちゃんになっても。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?