歪な貝
幾千年の昔、とある孤島のぽつりと立つ家に住むポンタのもとに首のない人間が訪れました。
「すみません。この辺りでぼくの首を見ませんでしたか?」
首のない人間が突然喋りだし、ポンタは驚き腰を抜かしてしまいました。
「あ、あなたは首より上が無いのにどうやってしゃべっているんだい?」
「最近この辺りで落としたんですけど見てないですかね?」
彼は聞く耳を持っていませんでした。物理的にも。
ポンタは諦めて相手に会話の主導権をあげることにしました。
「二日前だったと思うのですが」
「二日前なら、そこの海岸で歪な貝を拾っただけですね。ほら、そこの棚の上に飾ってあるでしょう。だからあなたの首は見てないですね。」
「ああ、やはりここにありましたか。」
そう言って彼は棚の上の歪な貝を持ち上げ、自分の首に取り付けました。
「ええ!それはあなたの首だったのかい??」
「悪かったですね。僕の顔が歪で」
「あっ、」
このあと数十秒の間気まずい空気がその場を支配しましたとさ、おしまいおしまい。
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