ジローのいたずら
幾千年の昔、しろいくまが極寒の氷の上で寝ていました。
するとそこに村のやんちゃな男の子ジローがやってきて、しろいくまの体じゅうに墨で落書きをしてしまいました。
それから数日後、村の大人たちがそのしろいくまを見て言いました。
「なんということだ。生まれて初めて見た、黒い模様を持つくまを」
「こりゃあ奇跡だ。きっとあのくまは神の使者だ」
「そうだ。きっとそうにちがいない」
極寒の地に暮らし他の世界を知らず、白い生き物しか見たことがない村の人たちは生まれて初めて見た黒の模様を持つ生き物に大変驚きました。
そして人々はそのくまを神聖なものとしとても丁寧に扱いだしたのです。
くまのために毎日魚などの食糧を大量にとってきては与え、一日一回くまのまえで幸福の御祈りをささげるようになりました。
そんなある日、ジローが言いました。
「みんななにをしているんだい?そのくまは神の使者なんかじゃあないよ」
大人たちはそう言うジローを睨みつけました。
「おいジロー。お前は今何を言っているかわかっているのか?」
「あのくまを侮辱したんだぞ?」
ジローは言いました。
「侮辱なんてしてないよ。本当のことを言っただけさ。あのくまは神の使者なんかじゃあない。あの黒い模様だってそうだよ、僕が墨で描いたただの落書きさ」
「ジロー。それ以上くまを侮辱したら許さないぞ」
「そうだ。罰が当たって殺されるぞ」
ジローは笑いながら言いました。
「みんなして馬鹿だなあ。あんなただのくまを神の使者だなんて」
くまのことを侮辱し、大人たちのことを嘲笑するジローに周りの人々は堪忍袋の緒を切らしました。
そして大人たちは反省の色が全く見えないジローのことをボコボコにしました。
「やめて。痛い。ぶつのをやめてくれ、死んじゃうよ!」
しかし暴力は止まりません。
「神の使者を侮辱したからだ。一度警告したのにお前は守らなかった。死をもって償うしか道はない」
そして一晩中暴力を受けたジローは死んでしまい、くまの餌にされてしまいました。
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