死に嫌いの王様
幾千年の昔、とある国の、お金持ちの王様が家来に言いました。
「わしは死にたくない。家来ども、早く不老不死の薬を完成させるんだ!」
王様は焦っていました。自分の寿命が長くないことを知っていたからです。
とある日、町の占い師が王様に問いました。
「王様はどうして死にたくないと思いになるのですか?」
王様は答えました。
「死とは絶望だ。死んだらわしは永遠の暗闇に囚われ、塗炭の苦しみを味わうことになる。わしは不老不死の身体を手に入れ、永遠にこの世で優雅に暮らすのだ。」
占い師は答えました。
「いいえ王様。死とは希望です。死んだ後の人の行く末などこの世の誰が知りましょうか。そこは楽園かもしれないし、奈落かもしれない。何があるかわからないからこそ、期待のし甲斐があるのではないですか?」
王様はあっけにとられたような顔をし、家来に不老不死の薬を作るのを中止させました。
数日後、王様はあっけなく息を引き取りました。
家来が話すには、王様のその死に顔は、希望に満ちたものだったようです。
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