食ふ食われる
幾千年の昔、世界が炎に包まれました。
そこら一帯の森林は焼けて炭になり、山をも溶かす勢いで燃え盛る炎はまるで神の怒りのようでした。
幾多の生き物は皆海へ逃げ込みました。その中には溺れ、命を落とす者もいました。
そんな中、遥か上空を舞う鳥達は、海中で狂い乱れる者達を見下ろして言いました。
「貴様達には私達のような美しい羽がない。貴様達には陸か海にしか逃げ道はないのだ。しかし私達は違う。私達には空がある。どうだ?羨ましいか。」
これまで鳥達は地上の生き物、特に人間を恐れていました。
いつも食べ物として命を狙われていたからです。
だから、この人間が困っている絶好の機会に仕返しをしてやろうと考えたのです。
鳥達にとって飛べない者達の逃げ惑う図はたいそう滑稽なものでした。
鳥達がしばらく空を舞っていると、突然鳥達は咳き込み始めました。
燃え盛る炎から出た煙を吸ってしまったのです。
そこで、鳥達は皆真っ黒な煙に囲まれていることに気がつきました。
しかし気付くのが遅すぎたのです。
どんどん仲間の鳥が息絶えてゆきました。
そして時間もかからないうちに全ての鳥が空から消えました。
そして、しばらくして雨が降り、炎は完全に消えて無くなりました。
無事生き残った者達は、海に浮かぶたくさんの鳥の死骸を見て腹を鳴らしました。
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