じゃがいも男爵
幾千年の昔、とある村では100年に1度の不作が続いていました。村のみんなはお腹がぺこぺこです。
とある日、この村に住むピケルという青年がいつものように山に山菜取りに出かけると、いつも通る曲がり道に奇妙な葉が生えているのを見つけました。
不思議に思ったピケルは、山菜を取った帰りにもう一度その曲がり道に葉を見に行きました。
すると突然その奇妙な葉が話しかけてきました。
「そこのおぼつかない青年よ。ほうら君だ。肋骨の影が皮膚にくっきり浮き出ている貧相なそこの君よ。」
ピケルは驚き尻もちをついてしまいました。
「私はじゃがいも男爵と申します。どうも体が埋まって地面から抜けなくなってしまってね。どうか私を引っこ抜いてくれませんか。」
心優しいピケルは「うん」と頷きました。
「しかし、ひとつだけ約束してほしい。私のことは引っこ抜いても決して食べたりしないと」
じゃがいも男爵は言いました。
しかし、お腹を空かせ今にも死んでしまいそうなピケルは「食べないでくれ」と言われてかえって食べたくなってしまいました。
そしてピケルは、一度村に帰って村の男をみんな連れてきました。
じゃがいも男爵の足である葉に紐をくくりつけ、「そうれ」と声を出して引っこ抜くと、大人が5人縦に並んでも届かないほどの大きな大きなじゃがいもが地面から出てきたではありませんか。
村のみんなは「これでしばらく食べ物に困らない」と歓喜しました。
それから村のみんなはじゃがいも男爵を村へ持って帰り、冬籠りの数ヶ月ずっとじゃがいも料理を食べ続け、さまざまなじゃがいも料理を編み出しましたとさ。
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