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窒息事故を防ぐプロセスが迷走している

同じ企業グループの別のホームで、食事の形態を変えた事が原因で窒息し、死亡する案件が起きている。賠償問題になっている件もあるようだ。

通常、入居された方には、うちに来る前に生活していた病院等と同じ形態の食事を提供する。
嚥下に問題がなさそうでも、本人や家族が強く希望しない限りは変更しない事が多い。
食事形態を変更するのはリスキーだからだ。

最近、企業内で起こった窒息事故を紹介する。

▪️敬老の日、普段はキザミ食を食べている人に、誤ってぼた餅をそのまま提供して窒息、死亡。厨房とケアスタッフ間の連絡ミスが原因。


▪️お寿司の日に、普段から早食いの人が握り寿司を詰まらせて死亡。

▪️家族の希望で食上げして、初めて食べる時にスタッフが近くで見守らず、詰まらせて死亡。嚥下評価を受けずに食上げしたケース。

食事形態について説明すると、あくまでもうちの施設の場合だが、

◇常食
歯や嚥下に問題がない人の普通の形態の食事。普通のご飯とおかず。

◇常食・一口大
嚥下には問題ないが、歯の問題で食材が噛み切れない場合など。おかずが一口に入る大きさに切ってある。

◇お粥・キザミとろみ食
ご飯は全粥、おかずは全て細かく刻んでとろみが混ぜ込んである。嚥下に問題がある場合に選択する。

◇スベラカーゼ粥・ペースト食
主食は、ペースト状にしたお粥をスベラカーゼという粉を使ってプリンのような形状にしたもの。おかずは水分を加えて、ミキサーにかけてトロトロにしたもの。嚥下機能が落ちている場合に使う形状。

◇スベラカーゼ粥・ゼリー食
ゼリー食はペースト食をゼラチンなどで固めたもの。噛めなくても上あごと舌で潰せる性状。1番飲み込みやすく安全性が高い形状。

スベラカーゼ粥 ぷるんとした食感

この5パターンが基本。

食上げをする場合、うちの施設だとまずは嚥下評価を受ける。往診で歯科医院から専門の医師が来てくれる。
(※食上げとは、現在の形態よりも常食に近い形態に変更する事)

鼻の穴から胃カメラを喉まで進めて、喉の動きをモニターで観察しながら、検査用に色を付けた液体をゴクンと嚥下してもらう。

一回の嚥下で全て飲み込めたか、残っているか、気管に入り込んでいないかなど、何回か試して評価する。

医師の評価で食上げが出来るかが決まる。OKが出たら食上げができる。

食上げの話が出てから、嚥下評価が終わるまでざっと1ヶ月はかかる。往診で評価してくれる医師は少なく、予約が最短でも1、2ヶ月先になるのだ。

企業内で死亡案件が続いた事により、食上げまでのプロセスがさらに増えた。

食上げしたいとなったら
①本人と家族に嚥下評価を受けることを了承してもらう

②嚥下評価を受ける

③嚥下評価でOKが出たら、家族に連絡して食上げ決定

今まではここまで。

これからは、

④家族への説明をきちんと記録に残す

⑤ケアマネからホーム長へ報告

⑥ホーム長からエリアマネジャーへ報告

⑦その上のエリアマネジャーに報告

⑧部長職へ報告
→やっと許可される!

一体、何ヶ月かかるんですか?
全く現実的じゃない。

気をつけるべきポイントはそこじゃなくて、食上げして初めての場面には看護師が付くことをマニュアル化するとか、家族に対して食事に関する同意書を作って、不慮の事故から職員を守るとか、まずはそこからでは?

入居者にとって食上げは、夢のまた夢になりそう。

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