飲み込んだ入れ歯を取り除くのは命がけ
大変な事になってしまった。
90代女性、認知症が何年もかけて少しずつ進み、今では話すことはできず食事や排泄も全介助という状態。
元々穏やかな人柄だったので、トラブルなく平穏に生活してきた。それなのに...
ある日の夕食時、ひどくむせ込んだ。
最近、むせる事が多くなってきたので、とろみ剤の調節をして嚥下しやすい粘度を探っているところだった。
その日はあまりにむせるので、食事は途中で中止した。
居室に戻り口腔ケアを行う時に、介護スタッフは上の「部分入れ歯」が入っていない事に気づく。いつからないのだろう?日勤のスタッフに確認しないと、と考えたそうだ。
翌日確認すると、昨日の日勤のスタッフは義歯がない事に気づいていなかった。
そこから大捜索が始まる。
ベッドマットの隙間、シーツや掛け物のシワの間、枕カバーの中、ベッドの下、洗面台の周辺の床、脱いだ衣類の中...見つからない。
本人は食事が進まず、枯れ声になっていて午後には発熱した。
まさか、飲み込んでないよね...?!
それは「部分入れ歯」と呼ばれるもので、↑の画像にある様な、金属が付いているタイプ。金属のフックを隣の歯に引っ掛けて安定させる義歯だ。
私も話だけは聞いた事がある。
金属付きの義歯を飲み込むと大変な事になると。
つまり、内視鏡(胃カメラ)では取れず、全身麻酔の上、開腹手術となるらしいという恐ろしいウワサ。
飲み込むには大きいサイズだったが、念のためレントゲンを撮影しに総合病院へ向かった。
レントゲンの結果、飲み込んでいた。
喉の奥に金属が食い込んでいて、簡単には取れずやはり手術になるという。
病院で説明を受けたご家族によると、気管切開も必要で、数回に分けて手術する事になるという。
本当に申し訳ない事をしてしまった。歯科往診は受けていて、定期的にメンテナンスはしていたはずだが、いつの間にか金具が緩んでいたのだろうか。
入院は長期間になるらしい。回復して戻られる事を願うばかりだ。