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オオカミ少年だと思ってごめんなさい。

オオカミ少年とは、

「狼が来た」と嘘をついて周囲の大人を惑わせ、本当に狼が襲って来たときに大人に信じてもらえず、羊を食べられてしまう羊飼いの少年についての寓話。

80代男性のKさんは社交性は高いが、かなりの小心者。
2年前までは糖尿病の状態が悪くインスリンを注射していて、血糖値も毎日測定していた。

施設に入居して、食生活が整ったら血糖値も下がり、インスリンを離脱する事ができた。

ところが本人は、
「1単位でも2単位でもいいから、インスリンを打たせてほしい。」
「血糖値も測りたい。」
と訴えた。せっかく離脱できたのに、ちっとも喜ばない。

インスリンの適応じゃないと医師から説明しても、往診の度に「血糖が心配だ、測らせてほしい。」と懇願し、結局は自費で血糖測定の針やチップを購入し(保険適応にならない)、数日に一度は自分で測定しているらしい。

昨年は何の症状もないのに、しばらく検査を受けていないという理由で大腸カメラを自ら受けに行くという根っからの心配性。


そんな彼が、最近咳が出ると言い始めた。バイタルサインは問題ない。担当のケアスタッフに聞くと咳も出ている様子はなさそうとの事。

ん?またまた大袈裟に心配しているのかな、と思ったが、とりあえず主治医へ伝えたところ、咳止め薬が処方された。数日間内服し、まだ咳が出るから薬が欲しいと訴えられ、再び咳止めが処方された。

そのうちに、咳をすると右胸が痛いと言い出した。だが、咳をしている姿は誰も見ていない。食欲は普段通りで、リハビリをする様子もいつもと変わらない。Kさん、咳は出ますか?と問うと急にケホケホと始まる感じ...。
しかし、時々熱も出ていると本人は言う。

「さっき測ったら38度あった。」と言うので、再検してみるが微熱だったという事が何回かあり、申し訳ないが皆信用出来ない気持ちになっていた。

本人はこの地域の二次救急拠点病院への受診を希望し、往診医に紹介状を書いてくれと頼んだ。
往診医は書けないと断った。まずは近くのクリニックで診察を受けて、必要ならそこで紹介状を書いてもらうようにと伝えた。病院にはそれぞれ役割があるから、と。

本人は渋々、近くの内科を受診した。

そこでレントゲンを撮ったら、右の肺炎と胸膜炎を起こしている事が分かった。
幸い軽い状態のようで、入院はせずに抗生剤などが処方されて帰ってきた。

本当に病気でした。ごめんなさい...皆で疑った事を反省。

処方された抗生剤を内服して3日目、
「はき気がする、便もゆるい、もう俺はダメだ。」
と訴え、昼間から部屋を真っ暗にして寝込んだ。

また気弱になっている。たぶん、病気の症状じゃなくて、抗生剤の副作用じゃないかと思うので、それを伝えたら安心するかな。
しばらくは優しくしてあげようと思っている。

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