デリケートな胃瘻60代男性
繊細なのだろうか。
入居してから5年経つが、ずっと栄養剤の種類や量が決まらない人がいる。胃瘻のある全介助に近い状態の60代男性。
彼の訴えは、太ってきたから栄養剤を減らして欲しい、この栄養剤の味は、匂いが胃からあがってきて気持ち悪くなるから嫌だ、便秘中だから栄養剤はやめて水分だけにして欲しい...等々、毎日のように止まらない。
元々は「ラコール半固形」の栄養剤を1日3回に分けて計4パック(計1200キロカロリー)プラス水分を注入していた。
その後、1回に2パック入れるのは嫌だと言い出して(1日3回に分けて注入するので、3回の注入のうち1回は2パックになる)、仕方なく1日3パックに減量(計900キロカロリー)。
そのうち体重が減ってきたのだが、本人は2パック入れると苦しいから嫌と言うので、じゃあ水分の代わりにラコール液を入れてカロリーを増やそう、という往診医の苦肉の策で「ラコール液」を昼と夕の2回、1パックずつ水分代わりに注入する事になった。
これで1日の総カロリーは1300キロカロリー。
ところが、「俺、コーヒーは好きだけど、このコーヒーの匂いは嫌い。」と言い出した。コーンフレーバーも試したがお気に召さず。
そこでラコールからイノラスに変更してヨーグルトフレーバーを試したが、これはお腹が緩くなるから嫌だと言う。
ヨーグルトの匂いは気にならないらしい。液状。
決して太っていない。180センチ、50キロでBMIは15.4だ。拒食症や精神疾患の既往歴はない。
なぜ体重を増やしたくないのか問うと、「体重が増えるとリハビリが大変になるから。」と言う。リハビリに熱心かと言うとそうでもない。基本やりたくない、気分が乗る日とそうでない日を数週間単位で繰り返す。
往診医ともその件でよくぶつかっている。
医師が「体重が減ってきてるから、栄養剤を増やそうよ。筋肉も落ちちゃうからリハビリが進まないよ。」と提案しても「お腹が苦しくなるから嫌。」と拒否。
排便についても、毎日出るのは困る、入浴の日は出ないようにして欲しい、あのスタッフの夜勤の間は出ないようにして欲しい...
デリケートが過ぎますなあ。
下剤の量や飲む時間を変更したとしても、狙ったタイミングに出るようにするなんて難しい。人の体なんだから思い通りにはいかない。ましてやこの時間帯には出ないようにして、なんて難易度が高すぎる！
よく言えば「本人に合わせた対応」、悪く言えば「行き当たりばったりの対応」で今まできたけど、そろそろ決着をつけたいなあ。処方されたのに使わずに終わった栄養剤たちももったいない。
もう少し行動範囲を広げる事ができたら、気持ちに余裕が出来るかもしれないとは思う。ただ、気分屋さんでリハビリが順調に進まないという側面もあって、前向きなのか色々諦めているのか発言からは読みとれない。かまってちゃん的な要素も感じる。注目されたいのかなあ。
本人はYouTubeで昭和の歌番組みたいなのをよく視聴していて、セクハラ発言も時々あるような、いわゆる昭和のおじさん。
うーん、他のフレーバーを試す以外の打つ手が思いつかない...
何かで釣れるといいんだけど(暴言)