介護事故、真相は迷宮入り
高齢者施設において、介護事故は避けられない問題のひとつ。ただし、全ての事故において原因が判明するとは限らず...
60代男性、数年前の脳出血が原因で意思表出はできず、自分ではほとんど身体を動かせない。
関節の拘縮も進み、胃瘻からの栄養を受けている状態で、2年前にうちの施設に転居してきた。
実姉がもっとリハビリを進めたい、という理由で転居してきたのだが、拘縮が進んでいる上に、本人と疎通が難しいので、リハビリは進まない。時折、「うわぁ」「あー」という発語があるという状況。
失礼かもしれないが、愛嬌のある顔立ちで、スタッフは苗字を縮めて「○ちゃん」と呼んだりしていた(愛称呼びは、ほんとはダメだけど)。
ある日、麻痺側の右腕がパンパンに腫れているのをスタッフが発見。
近隣の整形外科に受診し、「右上腕外顆骨折」と判明。しかし、原因がわからない。
事故報告はあがっていないし、ぶつけたとか、落ちたとかの話も出ていなかった。整形外科医は、麻痺側だし骨が脆くなっているのだろうとコメント。
数日経つと、右腕全体が皮下出血で紫色から薄い緑色になり、黄色に変色していった。
そして、次の入浴の際に新たな事実が判明する。
右の脇腹から背中にかけて、広範囲の皮下出血が見つかったのだ。色は右腕の色と同じ。つまり、右腕を受傷した時に、体幹も同時に受傷したものと思われた。
右腕が腫れた時、体幹の異変には誰も気付かなかった。こんなに広範囲に変色しているのに...。
初めは変色していなかったのだろうか?
再び整形外科へ。
結果、第10、11肋骨骨折が判明。
翌日、往診医も診察に来てくれて、採血したところ、酷い貧血が判明(Hb 5.9)し、血胸になっていないか、出血源はどこだと大騒ぎになり、総合病院に受診するように指示が出て、近隣の総合病院に入院になった。
病院のCTやレントゲンでは出血源は分からず、輸血をして経過をみていく事になった。もしかしたら造血機能に問題があるのかもしれないが、精密検査は本人の負担が大きいので見送ることになった。
右腕と肋骨骨折、そして酷い貧血。
これは打撲か落下事故の可能性が高いと個人的には思う。ただ、証拠がない。血液疾患の可能性も否定できない。骨折部位周辺の皮下出血だけでこんなにHbが下がるのだろうか。
輸血を受けたら貧血は改善した。原因が分からないまま、というのは老人ホームあるあるだろう。身体の負担を考慮して検査しないケースが多いから、仕方ない面もある。
あまり考えたくはないが、スタッフが原因で負傷した可能性が否定できないので、何かを隠しているスタッフがいるかもしれないとモヤモヤしてしまう。
解決できないままで、記憶が薄れていく感覚が嫌だなあ。