救急車を呼ぶのは待って!
ある早朝、80代の女性がトイレ内で転倒し、脇腹を便座に打ちつけた。
その後から薄い血尿が出始めた。心配になった本人は、主治医がいるN総合病院に電話をかけた。状況を伝えたところ、うちの泌尿器科に受診して下さいと言われた。その病院までは1時間以上かかる。その事を伝えたら♯7119で相談するようにと言われ、すぐに♯7119にかけて状況を説明したところ、救急車を呼んだ方がいいと言われたそうだ。
私が関わったのはここから。
本人は救急車を呼ぶ気満々。意識レベルは正常だし、痛みは動けば痛いという程度。薄い血尿は出ていたが、バイタルサインも正常なので、救急車を呼ぶ状況ではない。
ひとまず往診医に診てもらいましょう、と伝えると「救急車を呼べって言われたんだから、往診なんて要らない!」と今にも救急車を呼びそうな勢い。
この女性は頑固で我が強い性格。残念ながらこちらの説得を受け入れてもらえる自信はなかったが、なんとかなだめて、15分で先生来てくれるから待って欲しいと説得した。この15分の長いこと。
途中待ちきれなくなった本人はナースステーションまで「ちょっと!まだなの!」と乗り込んできた(元気じゃん...)
救急車の適正利用は問題になってるんだから、ムリ言わないでよ、こっちが怒られるわい。
やっと往診医が到着。ポータブルの超音波で検査してくれて「多量の出血はないけど、超音波に映らない程度の出血はしているのかも。一応受診しましょう。あ、救急車は呼ばなくて大丈夫ですよ。」と説明があり、受診先を探すことになった。
受診先を探すのは大抵ケアマネの役割で、今回は「泌尿器科のある総合病院」をなる早で探してもらうように依頼。往診医から「外傷性の腎出血疑いって言えば、診てくれるんじゃないかな。」というアドバイスのもと、3件目で受け入れ先が見つかった。
さて次は、付き添いのヘルパーを探す。なんといっても急な話なので、すんなりは見つからない。どうしても見つからなければ、施設職員が付き添う事もあるが、施設の職員も人手不足でギリギリの配置でやっているので、そうそう付き添えないのだ。
本人は、まだかとイライラMAX...。コワイヨー。
往診医から診療情報提供書(紹介状)が届き、往診が終わってから約30分で受診の段取りができた。
受診先を本人に伝えたところ「その病院は行った人がみんな死んじゃうからイヤなんだけど。」と不満顔。そんな事ないから!と車に押し込んで出発させた。
比較的ゆったりとした業務の有料老人ホームだが、バタバタするのはこんなときだ。
受診の結果、診断は「腎震盪(じんしんとう)疑い」。「脳震盪(のうしんとう)のように、外的な衝撃で腎臓が揺れて毛細血管が切れたのでしょう。」と説明があったそうだ。
止血剤などが処方されて帰設した。
「安静にするようにって言われたから、しばらく部屋から出ません!」と宣言して居室に戻っていった。
とりあえず一件落着。
お疲れさまでした!こんな日は帰宅後のビールが最高においしい〜