見出し画像

【年中さんの頃の記憶】人と違っても大丈夫

 もう大人になった私は、人に合わせなければいけない時は合わせることもありますが、基本的には自分の感覚や好み、選択を大切に生きてきている気がします。「皆と同じものを持ちたい、着たい」と思ったことが、お友達と一緒に遊ぶためのおもちゃ数個以外では、ほとんどなかったように思います。

 今日は「人と違っても大丈夫」だと思った一番昔の記憶、私が幼稚園の年中さんだった時のエピソードを紹介してみたいと思います。

 私が通っていた幼稚園では、秋になると市のホールを貸し切って、パフォーマンスと楽器演奏の発表会が開かれました。毎年衣装は保護者の手作りでしたが、私が年中の時は、お着物で踊るという発表で、家からお着物を持ってくるよう指示がありました。母が持たせてくれたお着物は、母が幼い頃、母の両親にあつらえてもらったものでした。色は非常に渋い色で、こげ茶のような色を基調として、朱色や山吹色で模様が入っていました。私は自分の祖父母が母のためにあつらえた着物を着られることを嬉しく思って、ワクワクしながら幼稚園に行きました。

 さて、幼稚園で発表の練習をするため、お着物を出して着る時間になりました。周りの皆が持ってきたお着物を見て、私は驚きました。女の子達は、きれいなピンク色、明るい赤色のお着物ばかりで、とても鮮やかでキラキラして見えました。明らかに私のお着物の色だけ地味で、周りの皆のお着物とは違っています。

「うーん、皆の色はきれいだな。でも、私のはおじいちゃんとおばあちゃんがお母さんのためにつくった着物だから、特別なんだよな。」

 自分の中で、きれいな色のお着物を着てみたい気持ちと、このお着物は気に入っているという気持ちがぶつかりました。「皆と同じじゃないから嫌だな」という気持ちにはなりませんでした。そして「皆とは違うけれど、このお着物は素敵だ。だって、どこにも売ってないし、特別なんだもん」と結論づけ、母にもこの気持ちは打ち明けず(打ち明けたら、新しいお着物を買ってくれたと思いますが)、自信をもって発表会当日に臨みました。

 今でもこの発表会の写真を見ると、当時の自分に「人と違っても大丈夫って、そんな小さな頃に思えたのって、すごいよ!」と心の中で声をかけています。私が今も大切だと感じている自分のコアな部分は、幼い時に既に私の中に存在していたようです。

 

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集