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世界最大の原油埋蔵量を誇る、ベネズエラ、生産量が伸びないのはなぜ?

原油埋蔵量が多い国といえば

サウジアラビアなど中東諸国が多いイメージがあります。
実際
サウジ・イラン・イラク・クウェート・UAEの5カ国で
地球全体の埋蔵量のほぼ半分を占めているのですが、

世界で1番埋蔵量が多いのがベネズエラ
3番目に多いのがカナダであることはあまり注目されていない印象があります。

サウジの原油生産が1日あたり

1000万バレル前後
であるのに対して、

ベネズエラは
70万バレル前後
となっています。

このようにベネズエラにて埋蔵量に対して、生産量が少ない状況にはいろいろな要素が絡んでいるようです。

その点についてみていこうと思います。

①アメリカの経済制裁

アメリカのベネズエラに対する経済制裁は、ベネズエラにてチャベス政権が誕生したことがきっかけに発生しているようです。

かつて、1970年のチリではアジェンデ大統領が国民投票によって選ばれ、社会主義政権が民主選挙により初めて成立しました。
アジェンデの外交方針としては、キューバとの国交回復や、天然資源関連、外国企業の国有化を進めたところが米国の利益に反するところがあったと判断したのか、政権解体のための工作を進め、親米派の軍部によるクーデターを成功させました。

 時は移り、1999年のベネズエラでは、チャベスが大統領に就任しました。
チャベス政権は、アジェンデと同様に石油資源の国有化など反米・社会主義的な政策を行いました。これに対して米国はクーデターを行い、一時的にチャベスを失脚させることに成功しますが、すぐにチャベスは政権に返り咲きました。これにアメリカは、ベネズエラにたいして経済政策を行うと決定しました。

 2013年、チャベスは病死し、副大統領のマドゥロが政権を担当しました。マドゥロはチャベス同様に反米・社会主義路線をとりましたが、政情不安定な状況が続き、その後2015年には野党が議会の3分の2の議席を獲得したため、「ねじれ」状態に入りました。
マドゥロ政権への反対も根強く、それに対する弾圧も行われていたようで、2018年に行われた大統領選挙では、有力野党政治家の被選挙権を剥奪する、政権に賛成しない票を入れた人に対する食糧支援の打ち止めを行うなどしました。そういった背景もあり、マドゥロは大統領に再選された後も、政権反対のデモも激しく行われました。

 ここで、グアイド国民議会議長が、大統領選挙は無効で今大統領は不在であるとし、憲法に則り、みずから暫定大統領となりました。これに対してアメリカはグアイドを支持、その後も西側諸国がグアイドへの支持を表明しました。しかしながら、軍部はマドゥロを支持しており、それによりマドゥロによるベネズエラ国内の支配が続いている状況です。マドゥロ政権に対するアメリカの経済政策は続いており、原油生産にも制限があり、在ベネズエラ油田を保有する米国企業のシェブロンも生産が制限されていましたが、昨年11月下旬にその制裁が緩和され、シェブロンがベネズエラでの生産を再開しているようです。

 とはいえ、油田の半分ほどはベネズエラが国有化しているところもあり、またベネズエラは結成当初からのOPEC加盟国であり、また政情が未だ不安定でインフレ率も2018年に記録した60000%を超えるインフレ率よりは沈静化傾向にありますが、それでも2022年10月のデータだと前年同月比で155.8%を記録するなど、政治・経済共に非常に不安定な状況にあります。

 親米派のグアイドが政権を握ることで、ベネズエラ油田の生産が伸びる可能性がありますが、逆にマドゥロ政権が実質的に続くのであれば、ロシア・イランなどアメリカへの依存が比較的少ないとされる国と接近し、油田開発を進めれば、アメリカなど西側諸国がその分け前を得にくくなるリスクがあります。

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