得たいの知れない欲

21歳がもう20年前ってすごいなと思う。

当時は友達を作ることに積極的だった。
そもそもド3軍の私は、学生時代の友達が少ない。そのため、新規開拓を頑張りはじめた。
社会人になるタイミングで出会いは増え、少しはコミュニケーション能力もついたと思う。
そして、出会った友達は20年後の今も、仲良しであることが誇りだ。

最近、当時仲良くなった男友達に会った。
今は遠方に住んでおり、子供が小さいためなかなか会えない。
しかし、久しぶりに１人で東京に来るからと、ご飯に誘ってくれたのだ。

そこで、私たちには共通の友達(男)がいるので、せっかくなら３人で会うことを提案しようと思った。
でも。３人のグループLINEがあるなか、私個人のLINEで誘ってきたあたり、何か話したいことでもあるのかなと察して提案を辞めた。

昔、込み入った話をよくしていたのを思い出す。長電話であーだこーだ、日頃思っている本音をお互いが発する時間。

『トミーは何でも話しやすい。』

『何も考えないで話せる。』

そんなことを当時は言われた気がする。
何となく、今回の誘いは話したいことが溜まっていて、ぶちまけたいように察した。

彼は育児、家事、仕事に全力で追われており、自分の時間が皆無だと言う。
ストレスの捌け口がなく、限界に来ていたらしい。今回、何年かぶりの一人時間とのこと。

なんとも、真面目で家族想いなんだろう。

話を聞く限り、奥さんに全力で尽くしている。
奥さんには一人きりの時間を与え、遊ぶ時間や実家に帰る時間を好きにとらせているらしい。
そして、育児や家事を任せきりには決してしない。2時間通勤で疲れて帰宅しても、必ず家事をするらしい。そして朝は5時起きだと言う。

昔から彼女に尽くすタイプに見えたので、結婚生活もそんな感じなんだなと思った。

彼女。
そうだ、昔は彼女の話をよくされていた。
当時は尽くしっぷりに『よくやるなぁ』『彼女が大好きなんだなぁ』と感心したものだ。
結婚してもスタンスが変わっていないのはさすが。

そして思う。

あぁ、私の友達だなぁ。

何だかんだ真面目なあたり、私が友達として選ぶタイプの人間だ。
価値観が合うし信頼出来る。

そういえば、周りから私たちの性格が似ているとよく言われていた。
確かに、根暗なところやマイナス思考になりがちなところは似ている。
真面目で頑固で疑り深いことも。
笑いのツボがひねくれているあたりも。　

若いときは、周りに理解されにくい感情を共感してもらえるので、お互いにぶちまけ頼っていたなと懐かしい。

今回も、そんな感じだった気がする。
大きな問題や悩みをかかえているわけではない。ちょっとしたことを、ふわっと、何も考えずにお喋りする時間が必要だったのだ。
愚痴だって話せばいい。

20年間、散々周りからは

お互い何かあるんじゃないのか？

と、恋愛感情を疑われてきた。
そして、飽きるほど

何もない。

と伝えてきた。
気味が悪いとよく言われるのだけど、本当にそうなんだ。指一本すら触れたこともない。
多分、個体として相性が良いのだと思う。
そして、個体として大事にしているのだと思う。

旦那はかつて、この関係性を面白く思っていなかった。付き合いたてのころだ。

いっそ、間違いを起こしてくれたほうがいい。気持ちよく納得出来る。

とまで言われた。
旦那は近しい女の子に惚れやすいので、理解不能なようだ。
そんな私は、つい旦那に言ってしまった。

同じにすんな。

その、突き放した言葉は火に油だ。
でも、素直にそう思ってしまった。
私は、珍しいと言われるこの関係性が、このうえなく気に入っていたのだと思う。
矢沢あいの漫画NANAで言うなら、ナナとノブみたいな関係性だ。懐かしい。

ＬＢＧＴ的な悩みがあるわけではないけど、自分の性意識は特殊だなと思う。
身体は女性、性自認は女性、恋愛対象は男性。
スカートをはくしメイクもする。
髪も長めだ。
公共トイレや温泉は女性用を使う。
へたれで周りを頼りたい性格。
たぶん、素直に生きていれば、当たり障りなく『女』だ。

しかし、女扱いされるのが苦手。

無理してチヤホヤしなくていいから、リラックスしなよと思ってしまうのだ。
勝手に、男性はストレス感じながら『女扱い』をしていると思うふしがある。
自分なんかを認めてあげられない病の発作だ。
だから、自らカラッとした空気を仕向けている。居心地悪いと疲れるのは自分だし。

『男と喋っているみたい』とたまに言われるが、それでシメシメと思う自分がいる。
異性が目の前にいたら全員にそんな対応だ。
かなりおかしな思考。

きっと、そういう訳の分からない感覚が、珍しい関係性を生み出しているのかなと客観視。
色々理解されないだろうけど。

個体としての評価が嬉しい。

そんな風に昔も今も思っている。
死ぬ間際にチヤホヤ欲求が高まったらすまんと、将来の自分にあらかじめ謝っておこう。
　
得たいの知れない欲は、しばらく続くと思うけど。