“自分ごと”にしないとわからない。
ユーザーの“自分ごと”をつくる。
編集やメディアの仕事をする中で、よく語られるこの言葉。
“自分ごと”をつくるといっても、ユーザーが日々どんな暮らしをして、何を感じて、どんな課題を持っているのか…。
それは、データだけじゃなく、結局自分が体験してみないと何もわからないとつくづく思う。
かくいう私も、この1年で少しずつ“自分ごと”になっていったことがある。
それは、地域と、うつわだ。
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東京生まれ、東京育ち。
ほとんど記憶にないけれど、生まれたての頃は大阪に住んでいた時期があるらしい。
だけど、物心ついてから、東京以外の街に住んだことがなかった。なので今まで、東京が世間の中心だと思っていたし、他県に目を向けたこともほとんどなかったと思う。
でも、ご縁があって関わる会社が名古屋にあることで、地域の暮らしは少しずつ私の“自分ごと”になっていった。
私が編集長を務めるcocoroneの運営会社「IDENTITY」は、名古屋を拠点に活動している会社。関わるようになってから、何度か名古屋へ足を運ぶ機会があった。
モーニング文化が根付いた名古屋は、朝が賑わう街でもある。喫茶店は朝8時がピークタイム、その分夜は21時を過ぎると閉まるお店も多い。
名古屋城の金のシャチホコなどの影響か、家の内装から、カフェ、結婚式のお花まで、派手なものが好まれやすい。(東京で流行りのお店は、ロゴや内装が全体的にシンプルすぎるのか、名古屋では割と空いていた。)
大須の商店街は、原宿、浅草、秋葉原などを連想させるカルチャーが入り混じる街。だけどそこから電車で約20分移動すれば、東京の代官山・中目黒のような雰囲気の洗練された佇まいの街もある。
私が目にした“名古屋らしさ”は、ほんの少しだけだと思う。
でも、行けば行くほど名古屋のカルチャーを肌で感じることができて、地域に足を運ぶ面白さを実感している。
東京から出ず、ネットの情報だけだったら絶対にわからない景色が見えた。
今年の夏は、仕事で香川に行く機会もあった。今では名古屋だけじゃなく、香川も身近に感じている地域のひとつだ。
そして、ふたり暮らしをはじめて歳を重ねるごとに、少しずつ興味を持ってきたうつわ。
cocoroneの仕事や、ルームメイトとのつながりを通してなんとなくわかったつもりでいたけれど、わかったつもりから“自分ごと”に変化した瞬間があった。
それは、春に行われた益子陶器市にルームメイトのアテンドのもと参加した時のこと。
作家もののうつわはお店で買うか、個展や陶器市で買うか…大きく分けて2つのパターンがある。けれど、個展や陶器市で買う人の気持ちはいまいち理解できていなかった。
整理券をもらって並ぶのもめんどくさいし、わざわざ個展に行かなくてもセレクトショップで買えばいい。そんな風に思っていた。
だけど、実際に参加してみたら…
素敵なうつわとの出合いもあり、作家さんご本人に使い方や手入れの仕方を直接教えてもらったり、同じかたちのうつわでも自分の目で見て触れて、「この子だ!」と思えるうつわを見つけたり。
趣深いうつわ選びの世界がそこにはあった。
お気に入りのうつわと出逢ったことで、ワンランク上の料理に挑戦してみたくなったり、丁寧にお手入れしたいなと思うようになったり。
暮らしがちょっぴり楽しくなった。
秋は各地の陶器市が盛り上がる季節。
今年の秋もまた参加して、その深い世界をもっとのぞいてみたいなと思っている。
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ユーザーの属性や、居住地、時間帯、そして関連性の高いユーザーなど、データはあらゆるもの可視化した。
でも、画面越しのユーザーが、どんな暮らしをしていて、何に興味があって、どんなことに課題を感じているのかは、やっぱり自分が体験してみないとわからないと思う。
だから疑問に思ったことは調べるだけじゃなく、体験してみる気持ちをいつでも忘れないでいたい。
フリーランスになってから、SNSについてDMでお悩み相談をもらうことも増えた。
検索窓にキーワードを叩けば、TIPSや体験談はすぐに見つかるいまの時代。でも、SNSの使い方だってやっぱり自分がユーザー目線で体験しないと結局はわからないことも多い。
だから、まずは自分でふれて体験して、機能を使い倒してみて。それでもわからなかったら、勉強会や周りの詳しい人に聞く…など。
SNSもより“自分ごと”にしてくれるユーザーが、もっと増えるといいなぁと思っている。
ありがとうございます。いただいたサポートはうつわの仕入れやお店の準備に使いたいと思います◎