縫っているのは。
なにかの雑誌で特集されているのを読んでから「襤褸」とか「刺し子」とか「裂き織」とかがずっとどこかにひっかかっている。
少し前に青森に行ったとき、こぎん刺しが素敵すぎて自分でもはじめてみるもあまり続かず。やっぱりやってみたいな、と今度は刺し子をはじめてみたら。きた。これだ。
自分で方眼さえ書いてしまえば(さすがに地刺しはまだできない)どんな布でもどんな糸でも手軽にはじめられる。無心にぐし縫いを進めるだけで幾何学模様が浮かび上がるのも、編み物に通じるわくわくがある。5mm方眼を書くのはめんどいので1cm方眼。だからところどころずっこけた模様が浮き出てくるのだけど、それも愛嬌があってかわいい。
で。まあ、無心になる時間を欲するほどに、いろんなストレスを抱えた日々なわけで。
ふと、YOSHII LOVINSON時代のめっちゃ暗いアルバムが聞きたくなって「at the BLACK HOLE」をものすごく久しぶりに聞いた。当時はあまり響かなかったのだけど、ここにきて SIDE BY SIDE がずどーんときて繰り返し聞いている。
破れて中身も出ちゃってる、かなり深い君の傷を、縫って縫って銀河の果てまで縫って僕がふさいであげる、という歌。
そこ縫って ここ縫って 泣かないで 泣かないで
まだ頑丈じゃ頑丈じゃない まだ平穏じゃ平穏じゃない
布がとても貴重だった時代、どんなに小さなきれでもつないでつないで、穴があいたら何度も繕って、何枚も重ねて、頑丈にそしてあたたかく・・・という生活の中から生まれた刺し子や襤褸。
それを身につける誰かのことを思いながら、女性たちは夜な夜な針仕事をしていたんだろうなあ、とぼんやり思っていたけど、ただ無心に、自分の心の傷をふさぐかのように針をすすめた夜もあっただろう。そんなことを、この曲を聞いて思った。
無心になって針を刺す、刺す、刺す。縫う、縫う、縫う。わたしの心はまだ平穏じゃない、頑丈じゃない。だからまだ縫う、縫う、縫う。
わたし、刺し子にハマったわけがわかったわ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?