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【日記】 「スティルライフ」

ぶらりと立ち寄ったインテリアショップで聴き馴染んだ音楽が流れていた。baobab + haruka nakamuraの「TRAD」。ささやくようなピアノから始まる、僕の中では1日の終わりを慈しむような曲だ。

小説を書く時には、nakamuraさんの曲をよく聴く。というかほぼ毎日何かのアルバムをリピートしている。だからだろうか、放牧的な弦楽器の音色に合わせて、執筆中の記憶が溢れ出し、懐かしくて愛おしい気持ちになった。
立ち尽くし、しばし楽曲に身を委ねたあと、こちらを気にかける店員さんの視線に少しでも応えるべく、熱心にダイニングテーブルを見定めるフリをして、その場を立ち去る。

家に帰り、彼のソロピアノアルバム「スティルライフ」を聴き返す。
タイトルの通り、nakamuraさんの曲は生活の音がする。
ささやかな、ともすれば忘れてしまいそうな日常を旋律で包み込み保存する。まるで日記を書くみたいに。

僕も日記をつけようかな、気まぐれに思った。
どれだけの頻度でどこまで続くかもわからない。もちろん日記をつけたからといって、日々のささやかな出来事を覚えていられるわけではない。
でも、やっぱり僕は思う。

忘れてしまうことは選べないけど、覚えていたいことは選べる。

自分が覚えていたい瞬間を書き残すことには、きっと意味がある。
今はそんな気がしている。


photo 雨樹一期


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