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【小説感想】砂の器(松本清張)
ご挨拶
久しぶりの投稿。
2025年はインプットだけでなくアウトプットもしっかりやっていこうと思い。
どこまで続くかわからないが、触れたエンタメの感想などつらつらと書いていこうと思う。
基本自分の記録用で稚拙な文章ですが、気になった方に読んでいただければ幸いです。
はじめに
ということで早速松本清張氏の小説『砂の器』について書いていこうと思う。
2024年12月はそもそも仕事がかなり忙しく、かつ空いた時間はゲーム(ドラクエ3リメイク)に費やしていたので、年末年始はゆっくりと読書でもしようと思い、気になっていた松本清張氏に手を出してみた。
元々ミステリー小説の類は伊坂幸太郎氏や東野圭吾氏などで触れていたが、いわゆる社会派推理小説というものは初めてである。
ということでタイトルだけは聞いたことがあり、ネットでの評価も高い『砂の器』から読んでみることにした。
雑感
さて、感想としては一言で「面白かった」である。
個人的に推理小説は全体の
〜20%:導入部分であり落ち着いているが、その分どういう展開があるか想像の余地がありワクワクする
21~70%くらいまで:伏線もあり気が抜けないが、読み味としてはゆったり
71%〜:伏線が回収されていき一気に盛り上がる
という構成になっていることが多く感じる。
(そもそも大量に読んでいるわけではないのでそうではないものも多くある前提)
で、この『砂の器』はまさにそういった構成で、途中までは10%くらい読み進めては休憩、という繰り返しであった。
後述するがトリックとしてはあまりスッキリしないというか納得度は低いのだが、当時の社会的背景などを想像しながら読むとキャラクターの心情も理解でき、クライマックスは一気に読んでしまった。
以降はネタバレも含むため未読の方はご注意を。
作品紹介
出版年月日:1961年7月5日
あらすじ(Amazonより):
東京・蒲田駅の操車場で男の扼殺死体が発見された。
被害者の東北訛りと“カメダ"という言葉を唯一つの手がかりとした必死の捜査も空しく捜査本部は解散するが、
老練刑事の今西は他の事件の合間をぬって執拗に事件を追う。
今西の寝食を忘れた捜査によって断片的だが貴重な事実が判明し始める。
だが彼の努力を嘲笑するかのように第二、第三の殺人事件が発生する……。
人間の「宿命」とは何か?上下2巻。
所感
さて、この小説は基本的には
ヒントが見つかりテンションが上がるが、すぐにそれが決定打にならないことがわかりテンションが下がる
という出来事の繰り返しである。
これは単行本で一気に読む場合はかなり冗長に感じる要素であり、ネットなどで感想を調べるとここを低評価の理由としている人もいた。
ただこれに関しては発表当時は読売新聞の夕刊で連載するという形式だったが故で個人的には仕方ない部分と感じている。
むしろ連載として読んだ場合は毎回何かしらの展開があり、ヒントも出されるので早く次が読みたいとなりそうである。
且つ松本清張氏の場合は、特に移動時の風景描写などが巧であるため、謎解きとしては蛇足に感じる部分もある種の趣を感じられ、それが魅力となっている様に感じる。
この風景描写などを”趣”と感じるか、”無駄な文章”と感じるかで評価が大きく変わりそうだなと思った。
もう一点、本作の評価を大きく分ける部分として殺人の方法、トリックが挙げられるだろう。
本作の犯人は前衛音楽化の和賀 英良であるが、彼は自らの前衛音楽から生み出した超音波によって2件目、3件目の殺人を犯す。
この超音波による殺人は普通では思いつかないような方法ではあるので、操作が混乱していく、という流れだ。
このトリック、科学的な根拠は一定作品内で記述されているものの、本当か?と思うような内容ではある。
いわゆるご都合主義的な方法ではあるし、初見でこのトリックを看破できた人はいないのではないかと思うほど奇抜なものなので、推理小説として読んだ場合の納得度の低下を招いていると感じる。
且つ流れとしては1件目の殺人では超音波は使用しておらず、その後の1件目を隠すための2件目の殺人に使われたというのも一貫性を感じないであろう。
(さらにいうと3件目の殺人は意図的な殺害ではないというのもある)
明らかに推理小説としては粗いトリックではあると感じた。
さて、上記のような問題点はありつつ、改めて本作を"社会派"推理小説として読んだ場合はやはり評価は高いと思う。
犯人の動機は
新進気鋭の音楽家としてこれから栄光の道を歩むために、自らの暗い過去が明るみに出る可能性を消す
というものだが、ここでいう暗い過去は、ある病気の父と一緒に放浪生活をしていたがその過去を隠すために戸籍を乗っ取ったというものである。
(病名については念のため伏せる)
本作の時代設定は発表当時の昭和35年ごろというが、その病気は当時はすでに治療方法などが確立されていたものである。
ただしそれ以前はいわゆる差別をされてきた病気であり、遺伝性はないものの、感染の可能性はわずかにあるということで、新進気鋭の音楽家にとってみれば負のイメージを強くつけるものである。
自分はその当時の社会の扱い方などを正しく把握しているわけではないが、推理小説という”動機”が重要なジャンルにおいて、それを”社会問題”と紐づけ、且つエンタメとして成立させるという点において、やはり社会派推理小説としての完成度は高いと感じた。
筆者も本作を読んだあとにその病気のことを調べたし、エンタメとして後世に残した影響は強いであろう。
さて長くなってしまったのでこの辺りで締めようかと思うが、個人的に思っていることとして
ミスリードのためとはいえ関川 重雄の描写が濃すぎないか
とは感じている。
関川は序盤からかなりの量の描写がされ、且つ恋人が3人目の被害者となるので重要なキャラクターであることは間違いない。
ただそれにしても悪者っぽく描かれすぎているし、その割に最後に捕まった後の描写は少ないと来ている。
素人目線だとなんとなくニヒルな感じがかっこいいし、感情移入もしていく分、特に最後の呆気なさにガックリときてしまった。
濃すぎないか、と書いたものの正確な感想としては最後が薄すぎないか、なのかもしれない。
このあたりこの手の小説や松本清張氏に詳しい諸先輩方の意見を聞いてみたいものだ笑
色々と書いたが自分はそこまで推理小説や松本清張氏に詳しいわけではないし、平成生まれなので当時の社会情勢などは把握できていないので、その点ご容赦いただければと思う。
あくまで自分の記録用の記事ではあるが読んでいただいた方には感謝申し上げる。