時計のない部屋
壁の色は白く、天井は黒い。
床の色は思い出せない。
部屋には男と女がいる。
男はおれ、女は鼻の先。
向き合うふたり。
さて、これから何をするつもりなのか。
おれの頭は酒と薬でいかれてる。
状況が飲み込めない。
「あなた、脱がしてくれないのね」
意味ありげに見返す灰色の瞳。
すると、おれは女を見つめていたわけだ。
「今、何時かな?」
「知らないわ」
なるほど、見まわしても時計がない。
彼女の腕には己の尾を噛む蛇のリング。
おれの腕には錆びた手錠ときたもんだ。
「ふざけてるな」
「あら、そうかしら」
実際、わからない。
とりあえず首を横に振り
とりあえず女の唇を塞いでしまう。
それにしても
今、何時なんだろう。
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