誰かのために頑張ること

後輩育成が始まって数ヶ月が経った。
最初は私に後輩育成なんてと畏れ多い気持ちだったが、これまで先輩から指導される側だった立場から指導する立場に変わって、視野が広がったことを感じた。もちろん後輩育成によって、その程度の変化は起こり得ると想像は出来ていたし、立場の変化に伴い周囲からの期待が大きくなることも予測可能だった。同時にこれまで指導してくれた上司、先輩への感謝の念も湧いた。

そして、育成とはこれほどに奥が深いものであり、自分の弱みと向き合う行為だとは思っていなかった。さらには先輩からもちろん板挟み状態になっているが、今はこの経験も意味のある過程だと信じ、試行錯誤しながら少しずつ前に進んでいる。


後輩育成をする上で求められる能力には説明力と、聞く力、そして周囲を調整する力が要ると思われる。
まず説明力では、誰もが理解できるレベルまでに表現をシンプルにし、その事例に対応するなかで、おそらく遭遇するであろうトラブルや困りごとに関しても触れておく必要がある。また、新人が抱えるであろう初歩的な疑問を上手く汲み取って、どのように考えていくとよいか、何を調べればこの解答に辿り着くかまで、ヒントを出しながらアシストしていく。ここでは、決して答えを完全に提示するのではなく、あくまで自分自身でその答えに辿り着けるように方向を示すことがコツである。

次に聞く力では、後輩の思考過程がどのように成されているのか、現時点でどこまで理解できたか、先輩に聞くほどではないと思われるような後輩の些細な疑問も聞きとり、丁寧に扱う。そして、自分軸で後輩の答えを聞くのではなく、相手の思考パターンや、感情、経験を踏まえ、なぜそのように思ったのか、そのように答えを出したのか、相手軸で理解することが求められる。決して頭ごなしにこちらの意見のみを伝えないこと、自分の感情に任せて聞かないこと、これは重要である。

最後に周囲を調整する力である。これは後輩育成が開始する中堅の立場になった際に、最も苦労する部分であろう。なぜなら、後輩育成には様々な他者が関わっていることが常であり、それぞれの立場から意見を頂くことがあるからだといえる。
そして、自分自身の考えに基づいて後輩指導をしていても、立場が違うだけでそれが良くも悪くも周りから指摘されてしまうこともある。

自分にとっては些細な一言でも、後輩にとってはこの先永遠に覚えているようなことも多々あるだろう。一言が棘にならないように、一言一言に愛情を込めて伝えていきたい。
種まきのようにこつこつとお水をあげるような気分で毎日後輩と関わっている。


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